日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
僧帽弁形成術後に溶血性貧血をきたした1例
山本 希誉仁平岩 卓根伊藤 久人岡田 行功
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2008 年 37 巻 2 号 p. 151-154

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抄録
症例は43歳,男性.僧帽弁閉鎖不全症に対し,後尖middle scallopの矩形切除とfolding plastyを行い,前尖には人工腱索を移植した.さらに,Cosgrove-Edwards ring(32mm)による弁輪形成術も施行した.術後の僧帽弁逆流はtrivialで,経過良好で退院となった.しかし,外来経過観察中に貧血の進行を認め,LDHも1,923IU/lまで上昇した.経食道心エコーを施行したところ,逆流jetが人工弁輪に衝突しており,逆流jetの流速は5.19m/sと速かった.βブロッカーの内服を開始したところ,貧血は一時的に改善し,LDHも1,145IU/lまで低下した.輸血の必要はなく,腎機能障害も出現しなかった.しかし,全身倦怠感が残り,若年でもあるので再手術を施行した.再手術所見では,前回移植した人工腱索部分のcoaptationが悪く,そこから逆流が生じていた.Jetが衝突する部分の人工弁輪は内膜形成に乏しかった.人工腱索を再移植し,Physio ring(30mm)で弁輪形成をやり直した.再手術後,貧血は改善しLDHも正常に戻った.逆流量が少なくても,jetの流速が速く人工物と接触する場合は高度の溶血性貧血が起こるので,経食道心エコーを施行し,jetの流速,方向を正しくとらえることが重要である.また,エコーで簡便に計測できる逆流jetの流速は治療方針を決定するさいの一つのパラメーターになるのではないかと思われた.
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