日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
S 状結腸切除を同時施行した左内腸骨動脈瘤破裂の1例
藤井 奨澤 重治永峯 洋渡邊 透
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2008 年 37 巻 3 号 p. 167-170

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抄録
破裂性腹部大動脈瘤では,7~30%に結腸虚血を合併することが報告され,重症の場合には結腸切除が必要になる.今回, S 状結腸を合併切除した左内腸骨動脈瘤破裂の症例を経験した.症例は78歳,男性.下腹部痛を主訴に救急搬送された.腹部 CT 検査で左内腸骨動脈瘤破裂と診断し手術を施行した.腹部大動脈の Y 型人工血管置換後,内腸骨動脈瘤を切開し,瘤より起始する分枝は内腔より閉鎖した.出血は後腹膜から S 状結腸の全周におよび,結腸梗塞が危惧された. S 状結腸を切除し,人工肛門を造設した.切除した結腸は全周性に粘膜面は暗赤色を呈し浮腫を認めた.出血は S 状結腸の粘膜下組織におよび,粘膜固有筋層の出血と粘膜上皮細胞の脱落を認めた.出血性梗塞の所見であった.経過は良好で術後第22病日に独歩退院した.下血などの症状がなければ術前に結腸の状態を診断することは困難であり,内腸骨動脈瘤破裂の治療では,周術期に結腸梗塞の危険性を考慮することが必要であろう.
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