2008 年 37 巻 6 号 p. 341-344
Amplatzer Septal Occluder(以下ASO)を用いた心房中隔欠損(ASD)閉鎖術が,本邦でも2006年4月より保険診療として認められ,現在19施設で施行可能である.当施設でも認可を得て,2006年6月より本治療を開始し,2008年1月の時点で68例に至る.今回,本治療施行後約5カ月を経過し,ASOにより左房壁,大動脈無冠洞穿孔し,心タンポナーデを発症した症例を経験した.症例は14歳女性.ASO留置前の経食道心エコー上,ASD径17.4×15.0mmで,大動脈側の欠損孔縁は0mmであった.ASO(20-mm)を用い経カテーテル的にASD閉鎖術を施行後,約5カ月を経過し心タンポナーデを発症した.緊急手術を施行したところ,ASOの辺縁により左房壁を穿孔し,大動脈無冠洞に裂隙を生じていた.ASOを除去し,左房壁,大動脈無冠洞の穿孔部を直接縫合にて修復し,ASDを自己心膜にてパッチ閉鎖した.ASO留置後の心穿孔は非常に稀な合併症で,世界的にも報告例が少なく本邦では初めての経験であった.本症例のごとく,大動脈側の欠損孔縁が不十分な場合,本合併症発生の危険性が高いとも言われている.ASO留置の適応基準を満たしていても,大動脈側の欠損孔縁が不十分である場合,留置後は経胸壁心エコーによる厳重な経過観察が不可欠である.