2009 年 38 巻 1 号 p. 44-48
症例は41歳,男性.巣状糸球体硬化症による慢性腎不全にて22年の透析歴を有する.2006年9月に生体腎移植を受けるもMRSA感染により1カ月後に感染移植を腎摘出した既往がある.2007年1月下旬より38度を超す熱発を認め入院となったが,2月6日に背部痛とともに喀血を呈し,CTにて下行大動脈穿孔の診断となった.下行大動脈は全周性に石灰化が強いporcelain aortaであり,石灰化した動脈壁の間隙に形成されたpenetrating atherosclerotic ulcer(PAU)への感染を契機とする穿孔と考えられた.ステントグラフト留置術により穿孔部の出血制御を行い,感染治療の時間を設け全身状態の改善をはかったのちに,下行大動脈置換術および大網充填術を施行した.術後経過良好であり職場復帰を得た.