日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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38 巻 , 1 号
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原著
  • 西村 善幸, 大川 育秀, 馬場 寛, 深谷 俊介, 青木 雅一, 小川 真司, 米田 正始
    2009 年 38 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    前壁中隔梗塞後の虚血性心筋症に対するDor手術は生命予後を改善するが,遠隔期に心不全を合併する症例があることも報告されている.そこでDor手術の遠隔成績を明らかにし,遠隔期心不全の予測因子を明らかにした.遠隔期心不全の有無に分けた2群間の比較では心不全群で術後ESVIが大きく,術前のMR未治療を含めた遠隔期残存MRを有する症例が圧倒的に多かった.また術前MRに対しMVPを施行した8例中3例が心不全を発症し,いずれも術前MR3度以上であった.Dor手術は自覚症状,心機能を改善し,生命予後も良好であった.しかし遠隔期に心機能が悪化し心事故,とくに心不全を再発する症例があり,心不全予測因子は残存MR,術後ESVI高値,術後の左室球形化症例であった.術前からMRを合併する症例はMRも積極的に治療すべきであるが,術前MRが高度な症例は弁形成しても遠隔期にMRを再発する症例があり問題である.
  • 櫻井 一, 水谷 真一, 加藤 紀之, 野中 利通, 杉浦 純也, 波多野 友紀
    2009 年 38 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    新生児や乳児期早期では他の年齢層に比べ術後創感染や創治癒遅延が目立っていたため,対策として生後3カ月未満の正中創開心術例に2005年8月より皮膚縫合を編み糸吸収糸の連続縫合からモノフィラメント非吸収糸の結節縫合に変更し,創保護材もガーゼからハイドロコロイド創傷被覆材に変更した.この変更前の前期群28例と変更後の後期群22例を比較検討した.各手術時日齢:45±30,21±23日と前期群で有意に大きく,体重,手術時間,体外循環時間に有意差はなかった.閉創時間:30±11,22±4分,術後入院日数:61±41,44±31日でともに後期群で有意に短かった.縦隔洞炎発生は前期の1例のみで,創感染や創治癒遅延は,前期8例,後期3例,創再縫合を要したのは前期の4例のみであり,有意差はないが後期で創感染や創治癒遅延の頻度や程度が減少した.皮膚縫合法変更による創局所の血流の改善やハイドロコロイド創傷被覆材による皮膚の保温保湿,pH緩衝,静菌作用などにより,手術時間を延長することもなく,入院期間短縮にも寄与し,創感染予防,創治癒促進に有用であったと考えられた.
  • 冨澤 康子
    2009 年 38 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    オンラインの学術データベースにはPubMed, Scopus, Web of Science(WoS),他がある.Impact Factor(IF)や,論文数と被引用回数を一つの数字で示すh-indexを用いて雑誌の評価を行うことが可能である.国内外の胸部心臓血管外科系雑誌の評価および投稿雑誌の選択方法を検討した.現在,日本発でPubMedに収載されている外科雑誌は6誌,WoSにはSurgery Today(ST)と脳神経外科の2誌,ScopusのAnalyticsでSurgeryのリストに収載されていた胸部心臓血管外科系ではST, Ann. Thorac. Cardiovasc. Surg.(ATCVS), Gen. Thorac. Cardiovasc. Surg.,胸部外科の4誌で,h-indexが最も高かったのはSTの27で,被引用回数が増加しており,しかもトレンドが上昇傾向であった.IFのある国内外の胸部心臓血管外科系雑誌は8誌あり,IFとh-indexには相関関係があった(p=0.0002).J. Thorac. Cardiovasc. Surg., Ann. Thorac. Surg., J. Vasc. Surg.の3誌のh-indexは近似しており119以上あったが,Eur. J. Cardiothorac. Surg.は59であった.J. Cardiovasc. Surg.(JCVS), Thorac. Cardiovasc. Surg., J. Card. Surg., Heart Surg. ForumおよびSTの中ではJCVSに勢いがあった.ATCVSのh-index 17から仮想のIFを計算すると0.3であった.投稿時には雑誌のIFばかりでなく分析機能を活用し勢いがあり将来に期待できる雑誌を選択することが肝要である.
症例報告
  • 林 太郎, 山下 輝夫, 大北 裕
    2009 年 38 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性.血液検査上の好酸球増多と心不全症状を主訴に当院に来院した.精査の結果,好酸球増多症および高度僧帽弁閉鎖不全症が指摘された.画像上,左室内膜に炎症が進展し,そのために僧帽弁後尖の可動域が失われ相対的に僧帽弁前尖が逸脱していると判断した.原疾患である好酸球増多症は稀な疾患であるが,それ自体が血栓塞栓症の大きなリスクとなる.今回は若年者であり形成術を第一選択とした.術中僧帽弁後尖は左室内膜と一塊になっており剥離困難であったが前尖は正常であったため,down-sizeの弁輪縫縮による前尖の単弁化を行った.術後心エコーでは僧帽弁逆流は軽度となり心不全症状も改善した.また術後血栓塞栓症回避のために原疾患である好酸球増多症のコントロールも重要と考え,FIP1L1-PDGFRα 融合遺伝子陽性の好酸球増多症候群に有効なImatinib mesilateの内服をワーファリンと共に早期より開始した.現在術後10カ月が経過しているが,術後血栓塞栓症は発症していない.適切な術式の選択とワーファリンでの抗凝固療法,そして好酸球増多症候群自体のコントロールが術後血栓塞栓症回避に有用である.
  • 松木 克雄, 藤原 英記
    2009 年 38 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞(AMI)後の左室自由壁破裂(LVFWR)は重篤な合併症であり,特にblow out型は救命が困難である.今回の症例は,64歳男性,ショック状態で当院に搬送され,心電図所見と心エコー検査での心タンポナーデの所見から前壁の急性心筋梗塞による左室破裂と診断し緊急手術を行った.手術では心膜を切開すると血餅が排出され左室前壁の破裂孔から血液が大量に噴出した.Electromechanical dissociation(EMD)となったため経皮的心肺補助装置(PCPS)と大動脈内バルーン・パンピング(IABP)を装着した.フェルト帯をあてモノフィラメント糸でのマットレス縫合で止血しさらにフィブリン糊などで圧迫止血を行った.術後肝不全を併発し血漿交換術・ビリルビン吸着療法を行い,第48病日に独歩退院した.術中にblow out型LVFWRを生じた症例に対しPCPS・IABPにより循環動態を維持しながら縫合止血を行い救命し得たので報告した.
  • 山名 孝治, 澤崎 優, 泊 史朗
    2009 年 38 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.胸部下行大動脈瘤切迫破裂にて準緊急手術で,胸部下行人工血管置換術を行った.手術後8日目から発熱し,抗生物質の投与を開始したが,術後20日目より掻痒を伴う発疹が発熱とともに生じ,薬剤アレルギーが原因と思われたため抗生物質をすべて中止した.発熱を繰り返したが徐々に軽快し,術後98日目に退院となったが,術後5カ月目に発熱にて再入院となった.CT,ガリウムシンチにて人工血管感染を疑う像であり,血液培養にてStaphylococcus epidermidisが陽性であったため,抗生剤の投与を再開し,手術を行わず保存的に治療を行った.その後発熱は治まり,現在術後14カ月を経過し感染の再燃を認めていない.人工血管感染で抗生剤治療のみで治癒した稀な症例を経験し,文献的考察を加えて報告する.
  • 古川 智邦, 小宮 達彦, 田村 暢成, 坂口 元一, 小林 平, 松下 明仁, 砂川 玄悟, 村下 貴志
    2009 年 38 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.発熱と呼吸困難を主訴に来院し,僧帽弁閉鎖不全兼狭窄症に合併した感染性心内膜炎(IE)によるうっ血性心不全と診断され,心不全および感染コントロール目的で入院となった.しかし,治療開始後も心不全が増悪するため,入院後9日目に準緊急で僧帽弁置換術を行った.術中所見では,僧帽弁口に疣贅が嵌入していた.僧帽弁狭窄症に合併したIEでは,常に疣贅の僧帽弁口嵌入の可能性を念頭において,より厳重な心エコー等によるfollowが必要であると考えられた.
  • 古川 智邦, 小宮 達彦, 田村 暢成, 坂口 元一, 小林 平, 松下 明仁, 砂川 玄悟, 村下 貴志
    2009 年 38 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性.大動脈弁位の感染性心内膜炎(無冠尖に疣贅)にて他院で大動脈弁形成術(AVP)を施行された後,しだいに大動脈弁閉鎖不全症(AR)が増悪し,労作時息切れを主訴として手術加療目的で当科に紹介となった.若年で無冠尖以外に病変がなかったことから,cusp extension法によるAVPを行い,術後は軽度のARに制御し得て,その後の経過も良好であった.cusp extension法は,自己の弁組織を最大限に残せることから,より正常な心臓の状態に戻せるという点において有用な手技であると考えられた.
  • 稲岡 正己, 藤井 明
    2009 年 38 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例はMarfan症候群の34歳,女性.27歳時にAAE,AR4度,上行大動脈瘤に対して大動脈基部置換と上行大動脈置換を行った.29歳時に急性B型大動脈解離を発症し,真腔狭小化による下肢虚血のため解離発症1カ月後にY型人工血管で腹部大動脈置換を行った.解離腔の拡大に伴い30歳時に下行大動脈置換を,32歳時に胸腹部大動脈置換を行い,今回,残存弓部大動脈と右鎖骨下動脈起始部の瘤化のため,弓部大動脈全置換と右鎖骨下動脈再建を行った.全経過7年間に5回の手術で大動脈全置換となった.全経過を通じて合併症はなく,最終の手術後1年半の現在,健在である.Marfan症候群において基部置換後に解離を発症し大動脈全置換となった症例は少なく,また分枝動脈の真性瘤の発生も稀である.本症例は短期間に種々の血管病変が出現したが,それぞれの病変の発生に対し分割手術を行うことにより良好な結果が得られた.今後は吻合部あるいは分枝動脈の厳重な経過観察を要すると考えられた.
  • 吉本 公洋, 大場 淳一, 南田 大朗, 安達 昭, 宮武 司, 青木 秀俊
    2009 年 38 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,男性.巣状糸球体硬化症による慢性腎不全にて22年の透析歴を有する.2006年9月に生体腎移植を受けるもMRSA感染により1カ月後に感染移植を腎摘出した既往がある.2007年1月下旬より38度を超す熱発を認め入院となったが,2月6日に背部痛とともに喀血を呈し,CTにて下行大動脈穿孔の診断となった.下行大動脈は全周性に石灰化が強いporcelain aortaであり,石灰化した動脈壁の間隙に形成されたpenetrating atherosclerotic ulcer(PAU)への感染を契機とする穿孔と考えられた.ステントグラフト留置術により穿孔部の出血制御を行い,感染治療の時間を設け全身状態の改善をはかったのちに,下行大動脈置換術および大網充填術を施行した.術後経過良好であり職場復帰を得た.
  • 椛沢 政司, 高原 善治, 茂木 健司, 畠山 正治
    2009 年 38 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    妊娠後期に急性A型大動脈解離をきたしたMarfan症候群の1治験例を経験したので報告する.症例は32歳女性の初産婦.妊娠29週目に突然前胸部痛を発症し前医を受診.CT上,急性A型大動脈解離と診断され手術目的に当科へ搬送された.可及的早期の心大血管修復が必要であったが,人工心肺使用の際のヘパリン投与による子宮・胎盤剥離面からの大量出血の危険性を考慮し,帝王切開・子宮全摘術を先行させ,2日後にBentall手術+上行弓部大動脈人工血管置換術を二期的に施行した.母子ともに術後経過は良好であった.妊娠後期に大動脈解離をきたしたMarfan症候群においては,その治療戦略が非常に重要になる.二期的手術,すなわち,帝王切開を先行し,ICUにて鎮静・人工呼吸管理下に厳重に循環動態をコントロールし,産科的出血が落ち着いてから心大血管修復を行うという戦略をとることで,安全に手術および周術期管理を行うことができた.
  • 片平 晋太郎, 吉田 聖二郎, 茂泉 善政
    2009 年 38 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳・女性,心雑音精査目的に当院循環器内科へ紹介となった.経胸壁,経食道心エコー,大動脈造影およびMDCTにて大動脈四尖弁による大動脈弁閉鎖不全症および上行大動脈瘤と診断され,大動脈弁置換術,上行大動脈置換術を施行された.大動脈四尖弁は大動脈弁機能異常の原因となる稀な疾患であるが,術前画像診断にてその形態を正確にとらえることにより合併症なく手術を施行することができた.
  • 岩田 圭司, 島崎 靖久, 阪本 朋彦
    2009 年 38 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.胸背部痛,右下肢痛を自覚し近医受診した.腹痛増強し当院搬送となった.造影CT上,上行大動脈基部より右総腸骨動脈まで解離し偽腔は開存,上行大動脈径は48 mmであった.上腸間膜動脈(SMA)も解離し真腔は血栓化した偽腔により圧迫され閉塞していた.心エコー上大動脈弁閉鎖不全はtrivialで心嚢液は認めず,循環動態は安定していたが腹痛持続し,腸管壊死の危険性を考慮し緊急的に開腹した.腸管壊死は認めなかったが色調は蒼白で,大伏在静脈による左外腸骨動脈-SMAバイパスを施行した.術後鎮静化降圧療法を行い2日後上行弓部置換を施行した.腹部症状消失し術後46日後に独歩退院となった.
  • 宮内 忠雅, 島袋 勝也, 村上 栄司, 梅田 幸生, 福本 行臣, 石田 成吏洋, 竹村 博文
    2009 年 38 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.胸部痛で当院を受診し,急性心筋梗塞にてPOBAを施行された後手術目的で紹介された.術前CTにて胸骨鎖骨の肥大と胸鎖関節の癒合を認めていた.術中,胸骨は厚く切断は非常に困難であった.胸膜も著明に肥厚し周囲組織と強固に癒着しており,LITAは検索したが不明であった.RITAも同様であったが中枢側5 cm程の剥離が可能であった.RITAはSVGとI-composit graftを作製し,Ao-SVG-#8,RITA-SVG-#4PD-#14 sequential bypassを行った.術後4日頃より両上肢のしびれ,脱力感があった.術後にはじめて,CT所見より胸肋鎖骨肥厚症と診断された.また術後造影CTにて,LITAは結合織に囲まれているものの通常通りの走行をしていた.術後CAGでグラフトは3枝とも開存していた.上肢症状は軽快し後術32病日に退院した.術後3年目に施行した冠動脈造影CTでもグラフトは良好に開存しており,現在骨肥厚症の症状悪化もなく外来通院している.
  • 柴田 講, 幕内 晴朗, 小林 俊也, 近田 正英, 村上 浩, 鈴木 敬麿, 小野 裕國, 千葉 清, 永田 徳一郎
    2009 年 38 巻 1 号 p. 64-66
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.背部痛で発症し,造影CTにてB型急性大動脈解離と左血胸を認め,破裂の診断にて緊急手術を施行した.左大腿動脈から人工心肺を開始し,左第4肋間開胸でアプローチした.遠位弓部に破裂を認め,超低体温循環停止下のopen proximal法にて左鎖骨下動脈近位から下行大動脈までの部分弓部下行大動脈置換術を施行した.術後,脳梗塞を発症したがリハビリテーションにて回復した.B型急性大動脈解離破裂は死亡率の高い疾患であり,特に弓部置換術による救命例は検索した範囲で他になかった.術中の脳合併症は左開胸下の弓部大動脈手術の大きな問題点であり,緊急手術といえども脳保護のための適切な戦略が必要である.
  • 吉川 雅治, 川口 鎮, 高野橋 暁, 八神 啓, 桑原 史明, 平手 裕市, 宮田 義弥
    2009 年 38 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    抗リン脂質抗体症候群を伴う全身性エリテマトーデスに血小板減少性紫斑病を合併した僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症に対して機械弁を用いた人工弁置換術を施行した症例を経験した.症例は42歳女性.20歳時にループス腎炎の診断でステロイド治療を開始し,後に右網膜静脈分枝閉塞症を発症した際に,抗リン脂質抗体症候群と診断された.抗核抗体陽性,ループス型抗凝固因子陽性,抗カルジオリピン-β2グリコプロテインI抗体高値を示した.僧帽弁切除標本病理検査により典型的なLibman-Sacks型心内膜炎による弁変性と診断された.本症例では,抗リン脂質抗体症候群による血栓塞栓症素因と血小板減少性紫斑病による出血素因という相反する血液凝固異常が混在し,術前の病態把握,術中の出血コントロール,術後の抗凝固管理に注意を要したが,合併症なく独歩退院した.しかし術後145日後に血栓塞栓症で失った.本疾患群では弁膜病変を外科的に治療しえても,心房壁など弁尖以外の非定型的心内膜炎は再燃寛解を繰り返すことが予想され,凝固異常も永続的であるため,間断なき厳重なる抗凝固管理,主体疾患であるSLEの適切な治療が肝要であると考えられた.
  • 門脇 晋, 石川 進, 川崎 暁生, 禰屋 和雄, 鈴木 晴郎, 阿部 馨子, 渋谷 誠, 高見 博, 上田 恵介
    2009 年 38 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.2年前に大動脈炎症候群による大動脈弁閉鎖不全症,上行大動脈拡大に対して,大動脈弁置換術,上行大動脈置換術を受けた.以後ステロイドの内服を行いながら外来通院していたが,小脳梗塞で入院した.人工弁感染による弁輪部膿瘍と診断され,準緊急手術を施行した.手術では破壊された弁輪部を郭清・修復後,Ross手術を行い救命した.Ross手術は大動脈弁位人工弁感染に対する選択肢の一つと考えられた.
  • 小林 靖彦, 光野 正孝, 山村 光弘, 田中 宏衞, 良本 政章, 西 宏之, 福井 伸哉, 辻家 紀子, 梶山 哲也, 宮本 裕治
    2009 年 38 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性で術前に特に症状はなかった.Fallot四徴症に対し13歳時に根治術を,また46歳時にAVRを施行した.その後最大径が75 mmとバルサルバ洞の拡大を認め,52歳時に大動脈基部再建術を行った.術中,体外循環離脱後より気道内出血が出現し,術後ICU帰室時より右肺出血を認めた.3POD頃に内科的に完全に止血できたが呼吸不全が増悪し5PODにV-V ECMOを開始した.開始後6日目にECMOより離脱し得,59PODに退院となった.
  • 田中 恒有, 大喜多 陽平, 齊藤 政仁, 権 重好, 入江 嘉仁, 今関 隆雄
    2009 年 38 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    乳頭状線維弾性腫(Cardiac papillary fibroelastoma : CPF)は,良性の心臓腫瘍であり原発性心臓腫瘍の中でも比較的まれである.通常は大動脈弁や僧帽弁など左心系に多く発生するとされており,右心系に発生した報告は少ない.今回われわれは,三尖弁に発生したCPFを2例経験した.症例1は無症状で,心エコー検査で偶然発見された.体外循環使用下に腫瘍摘出術を行い術後経過は良好であった.病理組織診断ではCPFと診断された.症例2も同様に無症状で,心エコー検査で偶然発見された.体外循環使用下に腫瘍摘出術を行い術後経過は良好であったが,病理組織診断に難渋した.Hematoxilin-Eosin(HE)染色では腫瘍細胞の増殖を認めず,当初は石灰化のみと診断されていた.しかし肉眼的にCPFを疑ったのでEVG染色を行ったところCPFの陳旧化したものと診断された.
  • 角田 優, 福井 寿啓, 関 宏, 真鍋 晋, 下川 智樹, 高梨 秀一郎
    2009 年 38 巻 1 号 p. 83-85
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性.1994年高度房室ブロックにてペースメーカーを留置された既往があり,その後近医にて経過観察されていた.近医での経胸壁エコーにて左室前壁の腫瘍を指摘されたため,精査目的に当院紹介となった.当院で施行した経胸壁エコーでは左室前壁の乳頭筋付着部やや心尖部寄りに16×9 mm大の乳頭状の腫瘍を認めた.腫瘍は有茎性であり,辺縁は不整,可動性は大きかった.画像上fibroelastomaが考えられ,塞栓症発症の危険性を考慮し,入院翌日,緊急手術を施行した.上行大動脈送血,上大静脈・下大静脈脱血により人工心肺を確立し,心肺停止下に大動脈を切開,大動脈弁越しに内視鏡にて左室内を観察し,乳頭筋基始部および左室心筋に付着している腫瘍を確認した.腫瘍を切除した後,再度内視鏡にて残存病変のないことを確認した.術後7日目の経胸壁エコーでは異常所見を認めず,経過良好であった.Fibroelastomaの左室内発生は非常に稀であるものの,塞栓症のリスクは高いため,緊急手術が必要と考えられた.大動脈弁越しに内視鏡を使用し,左室を観察する方法は有効であると考えられた.
総説
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