抄録
症例は78歳男性.胸部痛で当院を受診し,急性心筋梗塞にてPOBAを施行された後手術目的で紹介された.術前CTにて胸骨鎖骨の肥大と胸鎖関節の癒合を認めていた.術中,胸骨は厚く切断は非常に困難であった.胸膜も著明に肥厚し周囲組織と強固に癒着しており,LITAは検索したが不明であった.RITAも同様であったが中枢側5 cm程の剥離が可能であった.RITAはSVGとI-composit graftを作製し,Ao-SVG-#8,RITA-SVG-#4PD-#14 sequential bypassを行った.術後4日頃より両上肢のしびれ,脱力感があった.術後にはじめて,CT所見より胸肋鎖骨肥厚症と診断された.また術後造影CTにて,LITAは結合織に囲まれているものの通常通りの走行をしていた.術後CAGでグラフトは3枝とも開存していた.上肢症状は軽快し後術32病日に退院した.術後3年目に施行した冠動脈造影CTでもグラフトは良好に開存しており,現在骨肥厚症の症状悪化もなく外来通院している.