抄録
症例は39歳,女性.38歳時,リウマチ性連合弁膜症のため大動脈弁置換(SJM regent 21mm)および僧帽弁置換術(On-X 27/29mm)を施行され,術後の経過は順調で退院となった.その後外来通院を行っていたが,約5カ月後,夜間呼吸困難が出現し入院となった.内科的治療に反応せず心不全が急速に進行し,ショック状態となった.人工弁透視および経食道心エコーにて血栓による僧帽弁位On-X弁の機能不全と診断し緊急手術を施行した.人工弁輪を全周性に覆う巨大な血栓を認め,弁葉の開放制限を生じていた.血栓除去を行い心機能は回復したが,周術期に生じた脳梗塞のため意識障害と麻痺を残した.術後10カ月後にリハビリ目的で転院となったが,経過中血栓の再発は認めなかった.近年使用されている二葉弁では,パンヌスを伴わない血栓による重篤な開放制限の報告は稀である.今回われわれは同弁の生体内における適切な開放角度を,他の症例の人工弁透視をもとに検討したので加えて報告する.