日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
内胸動脈を使用した冠動脈バイパス手術における胸骨ピン(super FIXSORB®)の有用性
佐伯 宗弘中村 嘉伸丸本 明彬原田 真吾内田 尚孝西村 謙吾金岡 保西村 元延
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2009 年 38 巻 2 号 p. 96-99

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抄録

内胸動脈(ITA)を採取する症例では胸骨への血流低下に加え,採取の際に胸骨を持ち上げることにより胸骨のずれが生じやすいと考えられる.離断胸骨の固定性の向上目的に胸骨ピンを使用開始したのでその有用性につき検討した.2006年1月~2007年12月に当科でITAを使用した単独CABG待機手術症例37例を対象とした.胸骨ピンを使用しなかった18例をA群,使用した19例をB群とした.胸骨ピンは胸骨閉鎖時に胸骨体に1本,胸骨柄に1本留置し胸骨ワイヤーで閉鎖した.胸骨ピンを使用しなかった症例は金属ワイヤーのみで閉鎖した.ICU帰室後12,24時間のドレーン出血量,ドレーン抜去時期,Surgical Site Infection(SSI)の有無,および術後胸部CTでの胸骨柄,胸骨体の最大段差を計測した.帰室後12,24時間のドレーン出血量はB群が少ない傾向にあった.ドレーン抜去時期はB群が有意に短かった.またSSIはA群17%(3/18)に比べB群0%(0/19)と減少した.胸骨段差は胸骨柄,胸骨体ともにB群が有意に少なかった.ITA使用例では,胸骨ピンを使用することにより胸骨のずれを軽減させることが可能であった.また早期のドレーン抜去およびSSIの減少にも寄与した可能性が示唆された.

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