日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
高安動脈炎による異型大動脈縮窄症に対する上行大動脈-腹部大動脈バイパス術の3症例
稲垣 英一郎濱中 荘平南 一司田淵 篤柚木 靖弘久保 裕司金岡 祐司松本 三明正木 久男種本 和雄
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2009 年 38 巻 4 号 p. 239-243

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抄録

高安動脈炎による異型大動脈縮窄症の3症例に上行大動脈-腹部大動脈バイパス術を経験した.全症例で,心嚢内から横隔膜を貫き,肝左葉の後面,胃の後面,膵前面を通し上行大動脈から腹部大動脈終末部にバイパスした.膵前面を通し上行大動脈から腹部大動脈終末部にバイパスする経路では,胃後面で一部腹腔内にグラフトが露出するが,すべて大網でカバーし直接グラフトと腹部臓器が接することを避けるようにした.グラフトは14~16 mmの大口径人工血管を使用し圧較差は消失した.本術式の利点は,術中の体位変換が不要であること,膵前面にバイパスを通すため侵襲が少ないこと,病変部を直接触らなくてすむこと,必要に応じ代用血管から分枝を出すことができることなどがあげられる.また,大口径人工血管を用いることで確実な後負荷軽減と長期グラフト開存が期待できる.すべての症例で軽快退院した.特に症例1の高安動脈炎による異型大動脈縮窄症では術後11年11カ月目に他病死したが,その時点まではグラフトは良好に開存していた.

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