抄録
Streptococcus bovisによる感染性心内膜炎は消化管腫瘍,特に大腸癌を合併する頻度が高いことが報告されているが,本邦での報告例は稀である.今回,大腸癌を合併したS. bovisによる感染性心内膜炎を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は60歳,男性.2カ月間続く不明熱精査のため当院へ入院となった.静脈血培養からS. bovisが検出され,心臓超音波検査で3度の大動脈弁逆流と大動脈弁疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断した.下部消化管精査を行ったところ,S状結腸癌を認めた.同病変を内視鏡的に切除後,大動脈弁置換術を施行した.術後経過は良好で,術後36日目に独歩退院となった.