抄録
マルチスライスCT(MDCT)の登場により,冠動脈の評価だけでなく外科手術におけるさまざまな情報収集が可能となった.心筋症に対する心筋viabilityの評価においては,心筋シンチやMRIによる評価が一般的であるがCTにおいても十分な情報を得ることができる.症例は59歳,男性.45歳時に冠動脈3枝病変に対し他院で冠動脈バイパス手術をうけた.この時点で前下行枝領域は陳旧性心筋梗塞で低左心機能であった.その後内服を自己中止,通院をまったくしていない状況が続き,2009年2月に呼吸困難を主訴に当院に来院された.虚血性心筋症による心不全および左室内浮遊血栓を認め緊急手術を行った.術前CTで,左室viabilityの評価を行い,overlapping typeの左室形成術を選択した.側副血行路も含めた冠動脈評価によりバイパス部位を決定した.重度の僧帽弁逆流も認めていたが,CTにて乳頭筋間距離の拡大を認めなかったため,僧帽弁輪形成術のみ行った.左室内血栓の局在もCTにて明確に同定可能であった.術後の左室形態,心機能についてもCTによる評価が有用であった.