抄録
症例は65歳男性.2007年6月にARに対してAVR(SJM Regent 19 mm)を施行した.2008年3月から経胸壁心臓超音波検査で,大動脈-左室圧較差の増大を認め(peak PG : 46 mmHg, mean PG : 27 mmHg),6月に施行した同検査で開放制限が増悪(peak PG : 93 mmHg, mean PG : 58 mmHg).ワーファリンコントロール不良であったため,血栓弁を疑い,t-PAによる血栓溶解療法を施行した(80万単位).溶解療法施行の約1時間30分後に胸痛の訴えがあり,心電図検査で広範囲にわたるST上昇を認め,心臓カテーテル検査を施行した.Seg 7は完全閉塞しており,血栓吸引療法で再灌流した.金属弁の可動性は改善しており,弁に付着していた血栓が溶解し,冠動脈に塞栓したと推測された.血栓溶解療法中の厳重なモニタリングの必要性を再確認させられる症例であった.