日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
成人期動脈管開存に伴う肺動脈,大動脈弁および僧帽弁の感染性心内膜炎の1例
寺崎 貴光高野 環五味渕 俊仁福家 愛駒津 和宣高橋 耕平和田 有子瀬戸 達一郎福井 大祐天野 純
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2010 年 39 巻 5 号 p. 281-284

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抄録
発熱と神経症状を契機に発見された動脈管開存(PDA)患者に発症したIEを経験し,良好な治療結果を得たので報告する.症例は51歳,男性.39℃台の発熱と全身の関節痛,左半身の痺れを主訴に他院を受診した.CT検査でPDAと,肺動脈における開口部に腫瘤像を認め,脳,肺,腎臓,脾臓に多発性の梗塞像を認めた.心エコーでは大動脈弁は二尖弁の形態で,大動脈弁,僧帽弁ともに疣贅の付着を認め,細菌培養検査でIVHカテーテル培養からStaphylococcus aureusを検出した.PDAおよび感染性心内膜炎の診断で抗生剤治療を開始したが,大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全による心不全増悪傾向を示したため緊急手術を施行した.手術は上行大動脈送血,上・下大静脈脱血で人工心肺を開始し,PDA開口部に付着した疣贅を切除し,PDAは自己心膜プレジェット付き5-0ポリプロピレン糸で直接閉鎖,つづいて二弁置換を施行した.術後抗生剤治療に苦慮したが神経所見の明らかな増悪なく軽快転院した.聴診や経胸壁心臓超音波で診断が困難な動脈管開存については,CT検査が形態や病態を把握する上で有用と考えられた.
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