Mie共鳴により発色する新規顔料ナノ粒子インクの創製

抄録

顔料や染料は色素が可視光の特定の波長を吸収する性質を利用して発色するが，経年での退色が問題となっている．これを解決すべく，周期的な構造体の反射・干渉により色を出す構造色が注目されている．しかしながら，可視域で発色するためには，金属・誘電体ナノ構造を周期配列させる微細加工技術が必要であるため，高コスト・大面積化が困難という課題がある．本研究では，周期配列構造を用いずに，単一ナノ構造そのものが発色する高屈折率誘電体ナノ粒子に注目し，新たな構造色インクの開発を目的に研究を行った．高屈折率材料の球状粒子は100nm程度の粒径でも光と強く相互作用し，可視域で非常に大きな光散乱（Mie共鳴）を示す．シリコン粒子のコロイド溶液を粒子径制御（100–180nm）して作製する手法を開発し，可視域で明るい散乱を示すナノ粒子カラーインクを形成した．また，塗布による基板上での鮮やかな発色効果を実証した．

Graphical Abstract

(a) Schematic of Si nanoparticle -PVP composite film. (b–e) Reflectance spectra of Si nanoparticle ink and films. (f, g) Photos of Si nanoparticle-PVP composite film on PET substrate. Reprinted with permission from Ref. (Sugimoto et al., 2020) under the terms of the CC-BY 4.0 license. Copyright: (2020) The Authors, published by Willey-VCH.