抄録
症例は78歳,男性.遠位弓部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術予定であったが,待機中に喀血が出現した.CT検査の結果,動脈瘤の肺内破裂と診断し緊急手術を行った.瘤の急速拡大と炎症反応から感染性大動脈瘤と診断し,また術中所見における瘤の形態も仮性動脈瘤であった.術後6日目に感染に伴う縫合不全により吻合部出血が発生し心停止をきたした.集中治療室で開胸心マッサージを行い,用手的に出血を制御した状態で手術室を準備した.手術では超低体温循環停止下に壁側胸膜を用いて吻合部の修復を行った.抗生剤治療とリハビリテーションに長期間を要したが,感染の再燃はみられず改善した.吻合部出血は感染性大動脈瘤の術後合併症としてきわめて重篤であり,一刻を争う事態となる.よってこの致死的出血に対する対処法を常に念頭に置いて術後管理にあたることが重要であると考えられた.