日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
39 巻 , 6 号
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原著
  • 田岡 誠, 丁 栄市, 丁 毅文, 福本 淳, 佐藤 一樹
    2010 年 39 巻 6 号 p. 285-288
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    2005年1月から2008年7月までに行った待機的CABG 306例中,EF 35%未満の低心機能症例は24例で,そのうち7例(術前EF 22.7±5.4%,NYHA 3.4±0.4)に対して術中に左室心外膜心筋リード(LVリード)を植え込んだ.バイパス吻合後に鈍縁枝領域を展開した.肉眼的梗塞領域を避け,左室心筋の露出した部分にスクリュー固定式のbipolarリードを固定し閾値を測定した(1.1±0.4 V).7例中4例は術後心機能とNYHAが不良で入院中にCRT-Dを植え込み,1例は退院後3カ月目にうっ血性心不全で入院した際に植え込みを行った.CRT-D植え込み時のリードの閾値は1.0±0.1 Vと良好で,手技時間は経静脈的にリードを挿入するのに比べ短時間で可能であり合併症を認めなかった.低心機能症例で術後にCRT-D植え込みが予想される症例に対してLVリードを植え込むことは,安全かつ短時間でCRT-Dを植え込むことができる点で有用であった.しかし予防的措置としてのLVリード留置とならないため適応を十分に吟味して行わなければならないと考える.
  • 里 学, 末永 悦郎, 古賀 秀剛, 川崎 裕満
    2010 年 39 巻 6 号 p. 289-293
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤-腸骨動脈瘤に対するウーブンダクロン人工血管置換術においてコラーゲンシールドグラフトとノンシールドグラフトの術後炎症所見を比較検討した.2002年から2007年の102例を対象とし,人工血管はコラーゲンシールドグラフト,C群(INTERGARDTM woven graft : n=77)およびノンシールドグラフト,N群(UBE woven graft 50 cc WYL type : n=25)を使用した.2群において術後炎症所見として白血球数,CRP値,体温,臨床経過などを比較検討した.C群:N群において,年齢74±9歳:71±7歳,女性18%:12%で差はなく,人工血管はY-graftまたはI-graftとして用いた.手術時間は210±58分:214±63分で差はなかった.術中赤血球輸血は5%:28%(p=0.001)とN群で多く,術後赤血球輸血は10%:20%(p=0.21)とN群で高い傾向にあった.術後1,3,5,7日目での白血球数,体温は2群間で差はみられなかった.CRP(mg/dl)値は術後5日目,7日目で6.86±2.75:9.57±5.76(p=0.02),3.93±2.01:5.83±3.89(p=0.02)でありN群において高値を示した.術後在院日数は16.8±8.2日:15.6±6.0日で,術後2週間を超える37度以上の体温の上昇はC群2例,N群1例でみられた.コラーゲンシールドグラフトとノンシールドグラフトにおいて術後炎症所見の臨床的大差はみられなかった.
  • 久川 聡
    2010 年 39 巻 6 号 p. 294-299
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    体外循環手術症例では,心拍出量が十分にもかかわらず術後に循環虚脱や臓器障害をきたすことがある.今回,早期CHDF導入の有効性をサイトカイン,循環,呼吸,腎機能の面から検討した.2007年以降のCHDF施行例中,慢性腎不全,敗血症,補助循環装着症例を除く14例を対象とした.年齢は平均71(61~88)歳で,男女比は9対5であった.手術は,弁形成/置換術9例,冠動脈バイパス術5例,胸部大動脈置換術3例(重複あり)であった.手術時間は487±44分,体外循環時間は297±28分であった.循環虚脱の発症は,手術当日が2例,第1病日が10例(71%),第2病日以降が2例であった.CHDFは循環虚脱発症後直ちに開始し,血液濾過器はポリスルホン膜(SH-1.3,東レ社製)を,抗凝固薬はメシル酸ナファモスタットを用いた.CHDF導入前の心係数(CI)は2.7±0.1 l/min/m2,中心静脈圧(CVP)は11±1 mmHgであった.1)血液学的検討:IL-6はCHDF 12時間目には有意に低下した(216±50→92±27 pg/dl).IL-8もCHDF前の71±23 pg/dlから,12時間目には30±7へと低下傾向となった.血清アルドステロンは12時間目には有意に低下した.血清カテコラミン,顆粒球エラスターゼ,BNP,レニン活性では有意な変化はなかった.2)循環:収縮期血圧は,CHDF4時間後には有意に上昇した(94±6→123±6 mmHg).SVRIもCHDF4時間後には有意に上昇した(1,431±137→1,893±167 dyn・sec・cm-5・m2).3)腎機能:尿量はCHDF開始8時間以降には有意に増加した.血清クレアチニン値はCHDF前の2.1±0.3 mg/dlから翌々日には1.7±0.2 mg/dlへと低下した.4)呼吸:A-aDO2, Respiratory indexはCHDF 24時間後にはともに有意な改善を得た(317±37→246±31 torr, 2.9±0.4→2.1±0.2).早期のCHDF導入による炎症性サイトカインの除去と末梢血管抵抗の正常化が得られ,循環虚脱の速やかな改善と臓器障害の予防が可能であった.
  • 山村 光弘, 光野 正孝, 田中 宏衞, 良本 政章, 福井 伸哉, 吉岡 良晃, 梶山 哲也, 宮本 裕治
    2010 年 39 巻 6 号 p. 300-304
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    近年慢性血液透析症例における開心術では単独の冠動脈バイパス術(CABG)や大動脈弁置換術(AVR)のみならず,同時手術も増加しているが,その手術成績は未だ良好ではない.これまで当科では,術後血行動態が安定した術翌日からの血液透析(hemodialysis以下HD)を施行していたが,最近では血行動態の影響が少なく多量に除水できる持続血液透析瀘過(Continuous Hemodiafiltration以下CHDF,メシル酸ナファモスタット30 mg/h使用下に除水速度約80 mg/h)を術後早期から使用することを原則としている.今回,慢性血液透析症例の開心術におけるCHDFの有用性をretrospectiveに検討した.対象は2003年1月から2008年12月末までの慢性血液透析症例におけるCABG and/or AVR 48例である.術後透析管理によって,術後CHDFを施行した36例(以下CHDF群,男:女=20 : 16,平均年齢67.0±9.1歳,術式は同時手術13例・単独CABG16例・単独AVR7例)と,HDを施行した12例(以下HD群,男:女=8 : 4,平均年齢68.0±9.5歳,術式は同時手術1例・単独CABG 6例・単独AVR 5例)の2群に分け,比較検討した.手術時間・人工心肺時間・術中水分バランスには,両群間に有意差はなかった.しかしCHDF群はHD群に比べ,術後透析管理の開始時間は早く(8.0±5.8 vs. 21.0±1.0時間)かつ術後24時間の除水総量(1,200±110 vs. 550±50 ml)も有意に多かった.しかも術後3時間・24時間・48時間のドレーン出血量は,両群間に有意差はなかった.病院死亡はCHDF群6例(17%,心不全3・不整脈・肺炎・広範囲腸管壊死,うち5例は同時手術例)で,HD群1例(8.3%,心不全,同時手術例)であった.今後も増加が予想される同時手術や重症例には,術翌日の血液透析よりも術直後から持続血液透析瀘過(CHDF)を使用するのがよいと思われる.
症例報告
  • 田中 恒有, 入江 嘉仁, 今関 隆雄, 六角 丘, 齊藤 政仁, 大喜多 陽平, 龍 興一
    2010 年 39 巻 6 号 p. 305-308
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.近医で心電図異常を指摘され当院に入院した.10歳の時に猩紅熱で入院歴がある.冠動脈CT検査,冠動脈造影検査で,右冠動脈閉塞(RCA),左主幹部(LMT)の冠動脈瘤を含む3枝病変を認め,手術の適応となった.心停止下に動脈グラフトによる冠動脈バイパス術(CABG)および瘤切除を行った.冠動脈造影検査ではグラフトの開存を確認した.病理診断は川崎病による冠動脈瘤であった.川崎病に合併した冠動脈瘤に対する手術はCABGが基本手術であり,瘤切除を行うかどうかについての確立された治療指針はない.われわれは,瘤内血栓形成からLMTが閉塞する可能性や,冠動脈瘤の原因が確定されていないことなどから,CABGと瘤切除を選択した.しかし,今後は経皮的冠動脈形成術(PCI)による追加治療が不可能であるため,グラフト閉塞を予防することが必須であると思われた.
  • 菅野 勝義, 小林 平, 小宮 達彦
    2010 年 39 巻 6 号 p. 309-313
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    患者は58歳男性で,胸水貯溜と脈拍不整,NYHA2度程度の心不全症状を有していた.心エコーおよび心臓カテーテル検査にて収縮性心外膜炎が疑われたが,CT検査では心膜肥厚は軽度であった.肝硬変の所見があり手術リスクが高いと判断し内科的加療をすすめたが,6カ月経過後も改善傾向がなく,収縮性心外膜炎によるうっ血肝に起因した肝機能低下と判断し,心膜除去術を施行した.術後肝機能は著明に改善し,自覚症状も消失した.本症例について文献的考察を加えて報告する.
  • 大澤 肇, 藤松 利浩, 高井 文恵, 鈴木 博之
    2010 年 39 巻 6 号 p. 314-317
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の女性,胸痛を主訴として来院した.心臓カテーテル検査にて,左冠動脈主幹部への特発性冠動脈解離による高範囲の急性心筋梗塞と判断し,緊急冠動脈バイパス術を施行した.手術にて救命されたが,心機能が回復するまでに長期間を必要とし,最終的に多臓器不全を引き起こし第78病日に死亡した.特発性冠動脈解離は,危険因子のない健康な若年者に発症し,突然死の原因となる.発症は予測不能であるため,通常の臨床経過では救命困難となりやすく,早急な診断と速やかな血行再建が必要である.
  • 石田 成吏洋, 島袋 勝也, 松野 幸博, 竹村 博文
    2010 年 39 巻 6 号 p. 318-320
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.突然の激しい胸背部痛で発症したStanford A型大動脈解離に対して上行弓部置換術を施行した.術前の造影CT,3D-CTAで左椎骨動脈大動脈起始を指摘された.手術は低体温循環停止下で行った.逆行性脳灌流を併施しながら別個の1本グラフトで弓部を島状に再建し,グラフト側枝より順行性脳灌流を開始した.大動脈末梢側吻合後,人工血管本幹と弓部分枝再建グラフトを端側吻合した.大動脈中枢側を吻合して手術を終了した.術後経過は良好で,脳合併症など特記すべき術後合併症はなかった.術後3D-CTAでも左椎骨動脈を含め弓部分枝は良好に描出されていた.
  • 西村 征憲, 矢野 光洋, 長濱 博幸, 松山 正和, 古川 貢之, 横田 敦子, 石井 廣人, 鬼塚 敏男
    2010 年 39 巻 6 号 p. 321-324
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    三尖弁位の感染性心内膜炎は本邦では稀であるが,肺動脈瘤を合併したものはさらに少ない.今回,覚醒剤静注を契機に三尖弁位感染性心内膜炎を発症した症例に,末梢性肺動脈瘤合併を認め,三尖弁形成術および肺動脈瘤コイル塞栓術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は31歳男性の覚醒剤常用者である.敗血症およびDICにて前医に入院し,心エコーで三尖弁位感染性心内膜炎と診断された.感染コントロールの後,手術目的で当科へ転院となった.術前CTで右肺動脈A10に10 mm大の末梢性肺動脈瘤を認め,心臓手術に先行して肺動脈瘤コイル塞栓術を行い,引き続き三尖弁形成術を施行した.術後30日目に独歩退院し,退院後約2年の経過は良好である.
  • 石丸 和彦, 岩崎 弘登, 石坂 透, 佐藤 尚司, 新谷 隆, 渋谷 卓
    2010 年 39 巻 6 号 p. 325-327
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    比較的稀な心筋壁間に存在した脂肪腫の1例を報告する.症例は72歳,女性.胸部圧迫感を主訴に精査目的に当院を受診した.経胸壁心エコー検査で右房内に腫瘍を認め,当科紹介となった.胸部CT検査で右房内に約30×24 mm大の腫瘍を認め,手術を施行した.人工心肺下,右房切開すると右房内腔ではなく,右房外側壁内に存在する鶏卵大の心筋内腫瘍を認め,これを摘出し,欠損部はウマ心膜パッチで修復した.病理診断にて摘出した腫瘍は脂肪腫と診断された.
  • 渡邊 慶太郎, 前場 覚, 田口 隆浩
    2010 年 39 巻 6 号 p. 328-331
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性.腰痛と発熱を主訴として近医を受診し,腰椎MRIにて化膿性脊椎炎と診断された.また腹部造影CTにて膵尾部に膵膿瘍を,心エコーにて三尖弁位感染性心内膜炎の合併を認めた.三尖弁位の疣腫が急速に増大し,抗生剤による内科的治療に抵抗性を示したので,疣腫摘出および三尖弁形成術を施行した.術後は4週間の抗生剤治療により炎症反応の鎮静化が維持され,術後42日目に独歩退院となった.退院1年後において,感染性心内膜炎,多発膿瘍の再燃を認めていない.
  • 片山 暁, 内田 直里, 田村 健太郎, 須藤 三和, 村尾 直樹, 倉岡 正嗣
    2010 年 39 巻 6 号 p. 332-334
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性.尿路感染症にて治療中ショック状態となりCT検査にて多量の心嚢液貯留を認め当院へ搬送された.心エコーにて心後面に大量の心嚢液を認めたが穿刺困難であり,手術室で心膜切開を行ったところ血性心嚢液であったため直ちに胸骨正中切開にて開胸した.出血点は大動脈基部後面で感染性心内膜炎に伴う左室流出路仮性瘤の破裂と診断した.大動脈弁の変性は軽度であったが仮性瘤の処理のため弁尖を切除し十分にデブリードメントを行ったのち仮性瘤を自己心膜パッチで閉鎖し大動脈弁置換術を行った.術後経過は良好で第35病日に独歩退院となった.左室流出路仮性瘤は稀な疾患であるが感染性心内膜炎や大動脈弁置換術後,胸部外傷後などに起こりうる.経胸壁心エコーでは診断が困難なことが多いが,経食道心エコーやMDCTは診断に有用である.原因不明の急性心タンポナーデの診断においては念頭におくべき疾患と思われた.
  • 井上 天宏, 橋本 和弘, 坂本 吉正, 儀武 路雄, 長沼 宏邦, 川田 典靖, 篠原 玄, 保科 俊之, 村松 宏一
    2010 年 39 巻 6 号 p. 335-338
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.遠位弓部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術予定であったが,待機中に喀血が出現した.CT検査の結果,動脈瘤の肺内破裂と診断し緊急手術を行った.瘤の急速拡大と炎症反応から感染性大動脈瘤と診断し,また術中所見における瘤の形態も仮性動脈瘤であった.術後6日目に感染に伴う縫合不全により吻合部出血が発生し心停止をきたした.集中治療室で開胸心マッサージを行い,用手的に出血を制御した状態で手術室を準備した.手術では超低体温循環停止下に壁側胸膜を用いて吻合部の修復を行った.抗生剤治療とリハビリテーションに長期間を要したが,感染の再燃はみられず改善した.吻合部出血は感染性大動脈瘤の術後合併症としてきわめて重篤であり,一刻を争う事態となる.よってこの致死的出血に対する対処法を常に念頭に置いて術後管理にあたることが重要であると考えられた.
  • 古谷 光久, 外山 雅章, 加藤 全功, 加藤 雄治, 久本 和弘, 杉村 幸春
    2010 年 39 巻 6 号 p. 339-342
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例1は78歳女性,1984年に生体弁で僧帽弁置換を施行しているが,生体弁機能不全のため1997年にMosaic弁29 mmで僧帽弁再置換術が施行された.その後2005年より労作時呼吸苦が出現,心雑音も聞かれた.エコーでMRが進行しており,再々手術を施行した.摘出したMosaic弁は,一つのcommissureがステントポストからはずれる,commissural dehiscenceの状態になっており,周囲の石灰化も伴っていた.症例2は70歳男性で,1986年に生体弁で僧帽弁置換,1997年にやはり生体弁機能不全にて,Mosaic 29 mmで再置換を行った.2005年より新たな心雑音を認め,重度のMRを生じていたため,再々手術を行った.摘出した弁は,ステント付近の弁尖に亀裂が生じ,これによりMRを生じていた.Mosaic弁は第3世代の生体弁として,良好な中長期成績が報告されているブタ弁であるが,今回の2症例については,いずれもわずか7年余りで,構造的劣化のため再手術となった.明らかな原因は不明であるが,年齢から予想される生体弁の寿命よりもかなり短い期間での再手術となったものであり,生体弁の選択時には留意すべき事実であると考えられた.
  • 松元 崇, 梅末 正芳, 馬場 啓徳, 松井 完治
    2010 年 39 巻 6 号 p. 343-346
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.左前下行枝慢性完全閉塞を伴う2枝病変に対して,平成20年2月12日心拍動下に左内胸動脈を左前下行枝へ,大伏在静脈を右冠動脈後下行枝に吻合した.3月6日に心タンポナーデによるショック状態となり,心嚢穿刺術にて回復した.3月29日に再び心タンポナーデによるショック状態となったため,心嚢穿刺術ののち右開胸にて心膜開窓術を施行した.その後4月16日にも心タンポナーデ再発をきたし,心嚢穿刺後に右開胸での心膜開窓術を再度行った.以後心嚢液の再貯留なく退院となったが,6月23日心タンポナーデ再発を来たし,7月2日胸腔-腹腔シャントシステム植え込みを行った.術後経過は良好で,2年経過した現在も心嚢液再発を認めていない.開心術後短期間に心タンポナーデを再発した稀な症例であり,胸腔-腹腔シャントシステムが有用であったので報告する.
  • 尾畑 昇悟, 向井 省吾, 森元 博信, 二神 大介
    2010 年 39 巻 6 号 p. 347-350
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    右冠動脈を責任血管とする急性心筋梗塞(AMI)に合併した心室中隔穿孔(VSP)を2例経験した.症例1は63歳の男性,右冠動脈の完全閉塞に対する経皮的冠動脈形成術後にVSPを発症し手術を施行した.術中に乳頭筋断裂を来たし僧帽弁置換術を要し,右心不全の治療を必要としたが,術後7週目に退院した.症例2は77歳の男性で,右冠動脈#2の99%閉塞にてカテーテル検査中にVSPを指摘,緊急手術を施行した.術後心エコー,心室造影では遺残シャントおよび僧帽弁閉鎖不全症(MR)は認めなかったが,術後4週目に突然,急性MRを発症し心不全にて死亡した.右冠動脈を責任血管とするVSPはその解剖学的位置からも外科的修復は困難であり,特に僧帽弁乳頭筋の壊死は僧帽弁置換術を余儀なくされる場合もあり,注意が必要である.
  • 厚美 直孝, 山内 治雄, 河田 光弘, 吉井 剛
    2010 年 39 巻 6 号 p. 351-354
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は日齢10の男児.総肺静脈還流異常症(Ia+IIa型)に対して冠静脈洞のunroofingを行い,心房間交通を自己心膜で閉鎖した.術後に肺静脈狭窄(PVS)が進行したため生後5カ月で再手術を施行した.左房内から共通肺静脈に切開を加え,左房との交通を拡大した.しかし再びPVSが進行したため,生後9カ月で再々手術を施行した.前回と同様に左房内からアプローチしたが,左房後壁と共通肺静脈の前壁および3本の肺静脈の前壁を肺門方向に大きく切除した.垂直静脈は切離して左心耳に吻合した.術後の心エコーでは,4本の肺静脈血流がそれぞれ独立して左房へ還流する所見が得られた.術後4年を経過したがPVSの再発を認めていない.左房内からのsutureless techniqueにより肺静脈の合流に伴う乱流を軽減し,PVSの再発を防止できたと考えられた.
  • 阪本 朋彦, 堤 泰史, 門田 治, 合志 桂太郎, 高橋 洋介, 木谷 公紀, 大橋 博和
    2010 年 39 巻 6 号 p. 355-358
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例1:53歳男性.1992年急性大動脈解離(Stanford type A),大動脈弁閉鎖不全症にて上行弓部大動脈人工血管置換術,Aortic valve resuspensionを施行した.以降,外来通院中の2005年7月,心臓超音波精査にてValsalva洞の拡大(74 mm)および大動脈弁閉鎖不全症2度を認め,手術の方針となった.手術はDavid手術を行い,良好な術後経過を得た.症例2:65歳女性.1997年急性A型大動脈解離,大動脈弁閉鎖不全症にて上行大動脈置換,Aortic valve resuspensionを施行した.外来経過観察中,左上肢の浮腫,顔面浮腫が出現しCTにて残存大動脈基部および弓部の拡大および心臓超音波検査にて2度の大動脈弁閉鎖不全を認め手術目的に入院となった.手術はBentall手術および弓部置換術を施行した.良好な術後経過を得た.
  • 五十嵐 崇, 高橋 昌一
    2010 年 39 巻 6 号 p. 359-362
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.全身倦怠感と体重減少,発熱を主訴に受診し,心エコーで左心室-右心房瘻を伴う感染性心内膜炎と診断された.抗生剤による治療を受けたが,治療抵抗性の発熱と溶血性貧血の増悪ならびに全身の多発塞栓症を認めたため,活動期ではあったが手術となった.術中所見では大動脈弁は右冠尖と無冠尖の間に余剰弁尖を含む四尖弁の形態であり,大動脈弁および直下の左室流出路への疣贅付着と膜性中隔下縁の穿孔を認めた.感染組織の郭清およびパッチによる瘻閉鎖および大動脈弁置換術を施行した.膜性中隔周囲の郭清に伴い完全房室ブロックを生じたためペースメーカ植え込み術を要したが,術後感染の再燃を認めず良好な結果を得た.本邦における大動脈四尖弁と感染性心内膜炎の合併例のreviewを加えて報告する.
  • 杉村 幸春, 古谷 光久, 加藤 全功, 加藤 雄治, 久本 和弘, 外山 雅章
    2010 年 39 巻 6 号 p. 363-366
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2010/12/29
    ジャーナル フリー
    血管型ベーチェット病はベーチェット病の中で副症状として血管病変を示す疾患である.血管病変は動脈瘤形成,動脈閉塞,静脈閉塞など多彩で,特に動脈瘤の場合は瘤破裂や治療後の再発を認めることから予後不良と言われている.しかしながらベーチェット病の診断基準は臨床症状であるため,原因不明の病態として認識され,放置されてしまう可能性がある.今回我々は多彩な仮性動脈瘤を契機に診断に至った血管型ベーチェット病の2症例を経験したので報告する.症例1は69歳男性,左大腿仮性動脈瘤に対し自家静脈patch術を施行した.その1年後に右深大腿仮性動脈瘤を認め,同動脈結紮術を施行した.症例2は51歳男性,左浅大腿仮性動脈瘤に対して大伏在静脈をinterpositionした.
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