日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Cabrol 手術後24年を経て左冠動脈主幹部に仮性動脈瘤を発症した Marfan 症候群の1例
新垣 正美小出 昌秋國井 佳文渡邊 一正渕上 泰
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2011 年 40 巻 1 号 p. 27-30

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抄録

Cabrol手術後24年を経て,高度石灰化を伴った左冠動脈吻合部仮性動脈瘤を発症し,左冠動脈主幹部内膜摘除術を行い良好な結果が得られたMarfan症候群の1例を経験したので報告する.症例は50歳男性,Marfan症候群,24年前に初回手術としてCabrol手術,4年前に前回の冠動脈人工血管を利用したPhieler法による基部再置換術を行った.その2年後に僧帽弁閉鎖不全と心房細動による心不全を発症し,僧帽弁置換術とメイズ手術を行ったが,術後に縦隔洞炎を発症し大網充填術を行った.今回Cabrol法により吻合された左冠動脈主幹部が高度石灰化を呈し離開,仮性動脈瘤を形成したため準緊急手術となった.手術は低体温心室細動下に開胸,左冠動脈吻合部は全周性に高度に石灰化を呈し人工血管と離開していた.心表面は大網の厚い脂肪組織に覆われており冠動脈バイパス術は困難であったことから,剥離子を用い左冠動脈主幹部の全周性の石灰化を摘除,新たに8 mmの人工血管を外膜に外周の癒着組織ごと吻合した.弓部大動脈瘤も増大していたため,仮性動脈瘤の処置後,大動脈弓部全置換,さらに術前より洞不全症候群を呈していたためDDDペースメーカーを挿入し手術を終了した.Cabrol手術後24年で全周性の石灰化を伴う左冠動脈吻合部離開をきたした症例において,左冠動脈主幹部内膜摘除術を行い良好な結果が得られた.

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