日本心臓血管外科学会雑誌
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40 巻, 1 号
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巻頭言
総説(投稿)
  • 冨澤 康子
    2011 年 40 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    最近,外科を選択する女性医師数は増加しているが,日本において女性医師のおかれている状況は厳しい.日本では夫が家事と育児に参加することが少なく,女性医師の家事と育児の負担が重い.2008年に,日本外科学会女性外科医支援委員会は医学会分科会105学会にアンケート調査を行った(回答率96.2%).外科系11学会のうち4学会には合計16名の女性評議員が,また1学会には女性理事1名が就任していた.創設から100年以上の歴史ある日本外科学会と日本内科学会には,女性理事は未だに就任しておらず,日本心臓血管外科学会では評議員にも女性が就任していなかった.また,2008年の第38回日本心臓血管外科学会学術総会の座長を,女性は1名も担当していなかった.また医学会分科会では専門医更新時の留保条件に妊娠,出産,育児が含まれていることは少ない.日本では処遇改善,外科を専門として選択する場合の継続就労支援,男女共同参画,および育児支援が必要である.
症例報告
  • 松崎 賢司, 瀧上 剛, 松浦 弘司
    2011 年 40 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.慢性心房細動あり.4~5日前から右肩から手関節にかけての痛みが出現した.近医を受診し経過観察となっていたが症状が増悪し,他院を受診した.上肢の脈拍触知不良であり急性動脈閉塞を疑われ当科を紹介された.腋窩動脈は拍動触知するが上腕以下触知せず.急性動脈閉塞を疑い,入院当日に右上腕動脈より血栓摘除を試みたが,上腕動脈内腔は白色器質化しており新鮮血栓はなく慢性閉塞の所見であった.血管拡張薬等では改善が得られず,手指のひび割れ,疼痛が強い状態であった.血管造影にて尺骨動脈がわずかに開存していたため,腋窩動脈-尺骨動脈バイパスを大伏在静脈グラフトで施行した.術後症状は改善し,造影でもバイパスの開存が確認された.急性動脈閉塞様の症状であっても慢性期急性増悪の可能性もあり注意を要する.
  • 小島 望, 伊藤 智, 村岡 新, 小西 宏明, 三澤 吉雄
    2011 年 40 巻 1 号 p. 10-13
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    冠動脈の先天異常は稀ではあるが,不整脈などに起因する突然死をもたらすだけでなく,大動脈弁手術などの際には冠動脈損傷の危険因子となり得る.今回,我々は大動脈弁閉鎖不全症例で右冠動脈が左冠動脈に隣接して起始し狭窄を来した症例に対して大動脈弁置換術と冠動脈バイパス術を経験したので報告する.症例は62歳の男性で2年前から大動脈弁閉鎖不全症と診断され,経過中に大動脈弁逆流の進行が見られたため,手術の方針となった.術前の冠動脈3次元CT検査では右冠動脈の起始異常(Shirani分類IB2)と狭窄が確認された.右冠動脈には狭窄があり,右冠動脈の血行再建術も行った.術中術後経過は良好で,グラフトの開存も確認された.
  • 西野 貴子, 佐賀 俊彦, 北山 仁士, 中本 進, 鷹羽 浄顕, 藤井 公輔, 湯上 晋太郎
    2011 年 40 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    Marfan症候群は,近年の内科的あるいは外科的な診断治療技術の向上により平均寿命が飛躍的に延長したため,経過中に心血管病変で手術を必要とする症例が増加してきている.一方で胸郭変形,肺病変,眼病変といった多彩な病変を呈する結合組織異常による疾患であるため,合併疾患によっては手術操作が困難である場合がある.また,初回手術の成績向上により,再手術症例も出現してくるが,その場合手術はより困難となる.今回著明な胸郭変形を伴うMarfan症候群における大動脈弁置換術後弁周囲逆流に対して基部置換術を行った1例を経験したので報告する.
  • ——3D-CT 検査による心外膜面からの術前イメージングの重要性——
    前田 敦雄, 廣田 真規
    2011 年 40 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    我々は冠動脈瘤合併冠動脈瘻に対して,術前の心外膜面からの詳細なイメージングにより,冠動脈瘻の流入部と流出部を結紮可能と判断し,低侵襲なoff-pump手術を予定し,治療し得た.特に3D-CT検査による術前の解剖学的位置関係の把握は,冠動脈瘻に対する術式選択において重要であった.
  • 島田 康亮, 田中 啓介, 荒木 善盛, 成田 裕司, 前川 厚生, 大島 英揮, 碓氷 章彦, 上田 裕一
    2011 年 40 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    慢性解離性大動脈瘤の64歳男性.術前検査では,解離した下行大動脈の真腔が腹部大動脈で完全閉塞する特異な形態で,腸管および下肢には豊富な側副血行路が形成されていた.本例に対し,第1期手術として,大動脈から大腿動脈(asAo-FA)へbypassを設置した後,上行-弓部大動脈置換+Elephant trunk法を行い,第2期手術として下行大動脈再建を施行し,合併症もなく良好な結果を得た.本症例の特殊性を考慮した術式の選択,治療方針について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 新垣 正美, 小出 昌秋, 國井 佳文, 渡邊 一正, 渕上 泰
    2011 年 40 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    Cabrol手術後24年を経て,高度石灰化を伴った左冠動脈吻合部仮性動脈瘤を発症し,左冠動脈主幹部内膜摘除術を行い良好な結果が得られたMarfan症候群の1例を経験したので報告する.症例は50歳男性,Marfan症候群,24年前に初回手術としてCabrol手術,4年前に前回の冠動脈人工血管を利用したPhieler法による基部再置換術を行った.その2年後に僧帽弁閉鎖不全と心房細動による心不全を発症し,僧帽弁置換術とメイズ手術を行ったが,術後に縦隔洞炎を発症し大網充填術を行った.今回Cabrol法により吻合された左冠動脈主幹部が高度石灰化を呈し離開,仮性動脈瘤を形成したため準緊急手術となった.手術は低体温心室細動下に開胸,左冠動脈吻合部は全周性に高度に石灰化を呈し人工血管と離開していた.心表面は大網の厚い脂肪組織に覆われており冠動脈バイパス術は困難であったことから,剥離子を用い左冠動脈主幹部の全周性の石灰化を摘除,新たに8 mmの人工血管を外膜に外周の癒着組織ごと吻合した.弓部大動脈瘤も増大していたため,仮性動脈瘤の処置後,大動脈弓部全置換,さらに術前より洞不全症候群を呈していたためDDDペースメーカーを挿入し手術を終了した.Cabrol手術後24年で全周性の石灰化を伴う左冠動脈吻合部離開をきたした症例において,左冠動脈主幹部内膜摘除術を行い良好な結果が得られた.
  • 赤須 晃治, 森 龍祐, 植田 智宏, 友枝 博, 有永 康一, 福永 周司, 青柳 成明
    2011 年 40 巻 1 号 p. 31-33
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    重症心不全に対する治療として,Toyobo-LVASをbridge useで用いた場合,長期間の厳密なるワーファリンコントロールが必要である.しかも,血栓塞栓症やそれに起因する出血性の合併症がある場合,より正確にきめ細かくコントロールする必要がある.しかし入院治療が続く限り,採血検査を多く行うほど,「採血の痛み」という患者の苦痛も増すというジレンマが生じる.そこでCoaguChek XS® による簡易検査を用いて,従来法と比較検討した.それぞれは,非常によく相関し,相関係数は0.916で,回帰直線はY=0.8027X+0.3399であった.またCoaguChek XS® による採血は,患者の疼痛軽減にも非常に有用であった.
  • 窪田 武浩, 大久保 祐樹, 本橋 雅寿, 佐々木 重幸, 松居 喜郎
    2011 年 40 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.19歳時に心房中隔欠損症と診断されるも放置していた.67歳頃心不全症状が強まり近医通院治療をしていた.71歳時に腹水の貯留が著明となり前医入院治療,精査の結果,不完全型房室中隔欠損症,両側房室弁逆流,肺動脈弁狭窄症,心房細動,左冠動脈前下行枝狭窄と診断され,当科紹介受診した.手術に先立ち,左前下行枝にベアメタルステントを留置した.72歳時に房室弁形成術,一次中隔欠損孔閉鎖術,肺動脈弁切開術を施行した.術後経過は順調で,日常生活のqualityは著しく改善した.本邦での高齢者不完全型房室中隔欠損症の手術例は稀で,70歳以上の手術報告は本例を含め4例であった.高齢者の場合,冠動脈病変の合併や弁の著しい変性により弁置換が必要になることもあり,小児期とは異なった治療戦略が必要になる.一般に治療成績は良好で,運動耐容能改善が期待され,高齢者でも積極的に適応評価・手術を行うべきと考える.
  • 吉田 俊人, 内藤 祐嗣
    2011 年 40 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2011/01/15
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤症例に冠動脈病変を合併することは珍しくないが,確立した治療方針はまだない.一期的に外科的冠血行再建と腹部手術を行うさいには,その手術侵襲が問題となる.今回我々は,4例の冠動脈病変合併腹部大動脈症例に対し,侵襲度の低減のために冠血行再建をMIDCABで行った.平均手術時間は399分,平均冠動脈バイパス吻合枝数1.75,全例術当日か翌日に抜管可能で,退院日は術後平均29.3日後であった.手術死亡,病院死亡は認めなかった.術後評価は全例造影CTで行い,冠動脈バイパスは全て開存していた.以上,冠血行再建にMIDCABを用いて腹部大動脈瘤同時手術を行い良好な結果を得たので,文献的考察を加えて報告する.
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