日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告
肺動脈狭窄を合併した高齢者不完全型房室中隔欠損症の1手術例
窪田 武浩大久保 祐樹本橋 雅寿佐々木 重幸松居 喜郎
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 40 巻 1 号 p. 34-37

詳細
抄録

症例は72歳女性.19歳時に心房中隔欠損症と診断されるも放置していた.67歳頃心不全症状が強まり近医通院治療をしていた.71歳時に腹水の貯留が著明となり前医入院治療,精査の結果,不完全型房室中隔欠損症,両側房室弁逆流,肺動脈弁狭窄症,心房細動,左冠動脈前下行枝狭窄と診断され,当科紹介受診した.手術に先立ち,左前下行枝にベアメタルステントを留置した.72歳時に房室弁形成術,一次中隔欠損孔閉鎖術,肺動脈弁切開術を施行した.術後経過は順調で,日常生活のqualityは著しく改善した.本邦での高齢者不完全型房室中隔欠損症の手術例は稀で,70歳以上の手術報告は本例を含め4例であった.高齢者の場合,冠動脈病変の合併や弁の著しい変性により弁置換が必要になることもあり,小児期とは異なった治療戦略が必要になる.一般に治療成績は良好で,運動耐容能改善が期待され,高齢者でも積極的に適応評価・手術を行うべきと考える.

著者関連情報
© 2011 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top