抄録
81歳,女性.転倒による右大腿骨頸部骨折治療前の経胸壁心臓超音波検査で大動脈弁左冠尖に付着する10 mm大の可動性腫瘤を認めた.大腿骨頸部骨折手術8日後に人工心肺下に腫瘤摘出術を行った.術中所見では左冠尖弁縁中央部に10 mm大のシダ状にのびた腫瘍を認め,弁を温存する形で腫瘍切除のみ行った.病理検査では乳頭状弾性線維腫の診断を得た.術後合併症はなく順調に軽快し,現在,再発なく経過している.乳頭状弾性線維腫は比較的稀な心臓腫瘍であるが,非侵襲的検査や外科的治療の進歩により経験される症例も増加していくものと思われ,文献的考察を加えて報告する.