左心低形成症候群に合併する三尖弁逆流に対する手術時期と手術方法，および成績について検討を行った．1991年5月から2010年7月までに外科的治療をした典型的左心低形成症候群は105例で，うち28例に三尖弁逆流に対する三尖弁手術を計31回施行した．中等度以上の三尖弁逆流を適応として三尖弁手術を施行した．三尖弁に対する術式は，初回三尖弁手術で弁輪縫縮術単独15例，弁輪縫縮術＋交連閉鎖術7例，交連閉鎖術単独2例，edge-to-edge形成術2例，三尖弁置換術2例であった．三尖弁逆流の増悪のため3例に再手術を行い，三尖弁形成術2例，三尖弁置換術1例であった．術後観察期間は60.1±53.0カ月であった．術後中等度以上の三尖弁逆流の再発回避率は，全体で1年50.9%，3年42.0%，5年36.0%であった．Total cavopulmonary connectionに到達した17例のうち35.2%で中等度以上の三尖弁逆流の残存を認めたが，心臓カテーテル検査において中心静脈圧9.1±2.2 mmHg，心係数3.5±6.8 l/min/m2，動脈血酸素飽和度94.2±1.7%と良好なFontan循環を示した．左心低形成症候群の段階的外科治療において，中等度以上の三尖弁逆流を認めた時期に積極的に三尖弁手術を行うことで，三尖弁手術を必要としない症例と遜色のない良好な手術成績が得られた．
