日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
動脈硬化性大動脈瘤を合併した大動脈解離の治療戦略と転帰
坂本 裕昭佐藤 真剛渡辺 泰徳
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2011 年 40 巻 5 号 p. 221-226

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抄録

動脈硬化性大動脈瘤に合併した大動脈解離の治療戦略および治療成績に関して,1994年1月から2009年12月までに経験した228例の急性大動脈解離のうち,動脈硬化性大動脈瘤を合併した30例を対象としてretrospectiveに検討した.大動脈解離はStanford A型5例,B型25例であり,合併する大動脈瘤は腹部大動脈置換術後9例,上行大動脈瘤1例,弓部大動脈瘤6例,下行大動脈瘤2例,胸腹部大動脈瘤3例,腹部大動脈瘤9例であった.大動脈瘤と大動脈解離の関係から以下の3群に分類すると,大動脈瘤に対する人工血管置換術後に大動脈解離が発生したGroup 1が9例,大動脈瘤と大動脈解離が異所性に存在するGroup 2が8例,大動脈瘤と大動脈解離が接して存在するGroup 3が13例であった.大動脈破裂やmalperfusionがなければ基本的にはどのGroupに対しても,Stanford A型の場合は急性期に上行あるいは弓部置換術を,Stanford B型の場合は急性期には保存的療法を行い,それぞれ合併する大動脈瘤の径が大きい場合は慢性期に大動脈瘤手術を追加する方針で治療した.その結果,Group 3の来院時すでに大動脈解離が破裂していた1例と虚血性腸炎の1例が病院死亡となったが,全Groupにおいて急性期治療中の大動脈破裂および遠隔期大動脈関連死亡は認めなかった.合併する大動脈瘤が大きくても,破裂していなければ急性期手術を可及的に回避し,解離発生からできるだけ間隔をあけて大動脈瘤手術を行うという,我々の治療方針で早期治療成績および遠隔成績は概ね良好な結果であった.

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