今回我々は虚血性心疾患に対し心拍動下冠動脈バイパス術（off-pump CABG）を施行した症例を対象とし，術後心房細動の発症について検討した．2008年4月から2009年12月まで虚血性心疾患に対し当科で施行したoff-pump CABG 166例のうち心房細動の既往のある症例，緊急症例などを除いた142例を検討の対象とした．性別は男性111例，女性31例，平均年齢67歳（33～83歳）であった．術後心房細動の発症における術前因子について，バイパス枝数，右冠動脈病変，手術時間，合併疾患（高血圧・糖尿病・腎機能障害），左房負荷所見，左房径，左室拡張末期径，左室収縮末期径，左室流入速波形（早期流入波/心房収縮波：E/A比），左室早期流入波減速時間，肺高血圧，左室駆出分画，術前内服薬（β遮断薬，アンジオテンシン変換酵素阻害薬，スタチン系），を検討した．術後心房細動を発症した症例は21例（15%）で平均年齢は68歳であり，発症のない症例は121例（85%）で平均年齢は66歳であった．多変量解析では年齢およびE/A比が術後心房細動の発症に有意に影響を与えることが示された．また，心房細動発生例では有意に術後在院日数が長かった．
