抄録
今回われわれは巨大な右房原発血管肉腫により,症状出現から数日後という比較的急な経過で右心不全・ショック状態に陥った75歳女性の症例を経験した.緊急で人工心肺下に腫瘍を摘出し,EPTFEパッチによる右房再建を行い救命することができた.切除断端は陽性であり,術後放射線療法を追加した.現在術後14カ月を経過し,局所再発はないが,多発肺・肝転移に対して化学療法施行中である.原発性心臓血管肉腫は非常に稀で予後不良な疾患である.外科的な完全切除が治療の基本となるが,放射線療法や化学療法などを併用した集学的治療により,予後の改善を示す症例もあり,今回の経験を,文献的考察を踏まえて報告する.