日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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40 巻, 6 号
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巻頭言
原著
  • ——MDCT での curved MPR 法の有用性——
    川崎 宗泰, 新津 勝士, 原 真範, 佐々木 雄毅, 片柳 智之, 小山 信彌, 渡辺 善則
    2011 年 40 巻 6 号 p. 259-264
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    MDCTの発達と普及により冠動脈の評価が簡便になってきており,CABG術後グラフト評価も期待されている.今回CABG術後グラフト評価についてMDCTとCAGを行い,MDCTの有用性について検討した.当院で施行したCABG症例でMDCTとCAGで比較できた63例(男51例,女12例,平均年齢66歳)を対象にグラフトの狭窄,閉塞の形態について検討した.平均バイパス数は2.8枝,使用グラフトはLITA 49本,SVG 65本であった.グラフト評価はCAGでは全例可能であったが,MDCTではアーチファクトで評価困難症例は5例あった.MDCTはCAGと比べ侵襲が少なく,術後早期評価に有用である.MDCTは,CAGで評価困難な吻合部についてVR法,MIP,MPR法で画像構築することで評価できる.特にcurved MPR法ではグラフト全体と吻合部を評価するのに有用であった.今後撮影方法や機器改良により術前後の冠動脈やグラフトの評価が高まると考えられた.
  • 福村 好晃, 大住 真敬, 松枝 崇, 来島 敦史, 大谷 享史
    2011 年 40 巻 6 号 p. 265-268
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    社会の高齢化に伴い80歳以上超高齢者の重症ASに対するAVRは近年増加しているが,手術適応や手術成績に一定のものはない.過去8年間の手術成績を検討し,術前特に多く合併する虚血性心疾患(IHD)に対するCABGの同時手術が,手術成績に与える影響を検討した.症例数は77例で,年齢は80~88(平均82.7)歳.男性18例(23.4%).術前IHDを43%,心不全を41%に認め,NYHA分類IIIもしくはIV度の症例が43.4%存在した.原則として生体弁を使用した.病院死亡は4例(5.2%)であった.冠動脈に有意狭窄を有する症例にはすべてCABGを同時に施行した(26例,33.8%)が,今回CABGを同時施行したAVRと冠動脈病変を有しないAVRにおいて早期・遠隔期成績を検討した.両者の術前状態に差はなかったが,手術・体外循環・大動脈遮断時間とも有意にCABG合併例で延長し,輸血も多く要した.しかし,ICU滞在・術後入院期間に差はなく,病院死亡率も差はなかった.遠隔期生存率も差はなく良好で心臓関連死はほとんど認めなかった.IHD合併例にCABGを加えることは,IHD非合併単独AVRに比しても,手術成績・遠隔期成績ともに差を認めず,超高齢者においても手術侵襲の増加は悪影響を及ぼさない.ゆえに,非超高齢者同様にCABG同時施行が推奨される.
  • 山内 昭彦, 村木 里誌, 宮木 靖子, 橘 一俊, 上原 麻由子, 田淵 正樹, 中島 智博, 柳清 洋佑, 高木 伸之, 樋上 哲哉
    2011 年 40 巻 6 号 p. 269-271
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    われわれは再胸骨正中切開を行うさい,胸骨の離断前に剣状突起下より右開胸とし,右胸腔側より「用指的」に胸骨裏面のスペースを確認し挙上することで安全な再胸骨正中切開を行っている.「用指的」再胸骨正中切開の手法,およびその成績について報告する.2007年1月より2010年11月までに行った心臓大血管疾患手術症例における「用指的」再胸骨正中切開施行症例,50例を対象とした.男性23名,女性27名であり,平均年齢は60.6±12.5歳であった.再手術術式の内訳は弁膜症手術が33例(66%),大動脈関連手術が10例(20%),虚血性心疾患手術が5例(10%),その他が2例(4%)であった.胸骨正中切開数は2回目が37例,3回目が8例,4回目が3例,5回が2例であった.再胸骨正中切開時の出血・組織損傷は1例(2%)に認めたが,微小出血によるもので止血可能であり問題なく胸骨正中切開となった.手術死亡は0,病院死亡を1例に認めた.再胸骨正中切開時において,用指的に胸骨裏面を挙上し離断する手法は安全かつ簡便であった.
  • 緑川 博文, 菅野 恵, 高野 隆志, 渡邉 晃佑, 植野 恭平, 森島 重弘, 小野 隆志
    2011 年 40 巻 6 号 p. 272-278
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    Matsui-Kitamura(MK)stentによるopen stent-grafting(OSG)の初期成績を検討したので報告する.2005年8月から2011年3月までに胸部大動脈瘤(TAA)35例(男女比29/6,年齢58~86歳,平均71歳)に対し本術式を施行した.瘤形態は真性29例,解離4例(A/B 1/3),真性+B型解離2例であった.破裂有無は,破裂ないし切迫破裂4例,未破裂31例,瘤径は45~100 mm,平均67 mmであった.ステントグラフト径は33.5±3.2 mm,挿入長は149±21 mm,末梢位置はTh 6:2例,Th 7:11例,Th 8:15例,Th9:6例,Th 12:1例であり,全例挿入留置に成功した.併用手術は,MVRおよびCABG各1例,ペースメーカー植え込み術2例であった.術後合併症は,72時間以上人工呼吸10例(28.6%),Stroke 2例(5.7%),対麻痺1例(2.9%),不全対麻痺4例(11.4%,うち3例は一過性で完全回復),出血再開胸・虚血性腸炎・急性腎不全による一過性血液透析・気管切開を各1例認めた.病院死亡3例(8.6%,呼吸不全・腸管壊死・脳幹梗塞各1例)に認めた.われわれの開発したMK stentによるOSGは,ほぼ満足いく初期成績であり,その有効性が示唆された.
症例報告
  • 西村 善幸, 石井 利治, 大川 育秀
    2011 年 40 巻 6 号 p. 279-281
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    稀な先天性凝固因子欠乏症である第XI因子欠乏症を伴う腹部大動脈瘤症例を経験したので報告する.症例は67歳,男性.術前検査で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長を認めたため,先天性第XI因子欠乏症と診断した.手術前日に新鮮凍結血漿(FFP)を6単位投与後,腹部大動脈人工血管置換術を施行した.術中出血傾向は認めず,術後もFFPを投与し,術後13病日に合併症なく退院した.第XI因子活性は検査結果判明まで数日を要するため,周術期においてはAPTT値が凝固因子活性値の指標になると考えられた.
  • 濱本 正樹, 二神 大介
    2011 年 40 巻 6 号 p. 282-285
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.数年前から労作時息切れがあり増悪傾向にあった.精査の結果,高度の僧帽弁閉鎖不全症,心房細動,鏡像型右胸心と診断された.手術は僧帽弁置換術および肺静脈隔離術が施行された.鏡像型右胸心の解剖学的位置関係は患者の左側に立った(通常は第一助手が立つ位置)術者から見て水平方向が逆になり,垂直方向は正常と変わらない.手術時の要点としては,(1)心臓および大血管の位置を確認し,体外循環の確立と僧帽弁へのアプローチを決定する,(2)水平方向の手術操作(開胸,カニュレーション,心房切開,僧帽弁輪への糸かけ)は左右が逆なので慎重に行う,(3)僧帽弁は術者の左側寄りに位置し,斜め右側に面しているので,僧帽弁輪へ糸をかける際に縫合針を把持する位置や角度,順手逆手,縫合針の刺入角度などの運針操作に注意する.
  • 柳清 洋佑, 村木 里誌, 上原 麻由子, 橘 一俊, 山内 昭彦, 高木 伸之, 樋上 哲哉
    2011 年 40 巻 6 号 p. 286-289
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    高度石灰化大動脈と冠動脈病変を伴う重症大動脈弁狭窄症に対し,apicoaortic bypassおよび冠動脈バイパス術を同時に施行した症例を経験したため報告する.77歳女性.大動脈炎症候群のfollow中に労作時息切れを自覚するようになった.精査にて重症大動脈弁狭窄症(mean AVPG=74.4 mmHg,AVA 0.48 cm2)および右冠動脈入口部に高度狭窄を認めた.Porcelain aortaを呈しており,上行大動脈に対し手術操作を加えることは不可能と判断したため,apicoaortic bypassおよび冠動脈バイパス術を行う方針とした.左第6肋間からの左前側方切開にてアプローチし,apicoaortic valved conduit(Edwards Prima Plus Stentless Porcine Bioprosthesis 19 mm+UBE woven graft 16 mm)を縫着した.また,大伏在静脈を採取し,冠動脈バイパス術(valved conduit-#4AV)も施行した.術後cine MRIではconduit経由のflowが大部分を占めていた(44.4 ml/beat,92.3%).術後造影CTでは冠動脈バイパスグラフトの開存が確認できた.Apicoaortic bypassは上行大動脈遮断の困難な大動脈弁狭窄症に対し術式の選択肢となりうる.また冠動脈病変を合併していても同一視野にて冠動脈バイパス術を行うことができる.
  • 山岸 敏治, 坂田 一宏
    2011 年 40 巻 6 号 p. 290-293
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.左下肢の腫脹・痛み・痺れのため来院した.3D-CTで左外腸骨動脈から膝窩動脈末梢の全長にわたる動脈拡張症(arteriomegaly : AM)を認め,破裂し仮性瘤化した左上臀動脈瘤と浅大腿動脈瘤,さらに未破裂の外腸骨動脈瘤と膝窩動脈瘤を認めた.手術は左外腸骨動脈-後脛骨動脈バイパス術,深大腿動脈再建,左上臀動脈瘤空置,外腸骨動脈瘤・浅大腿動脈瘤・膝窩動脈瘤切除術を行った.術中に直面した最大の問題は,拡張した動脈分枝からのback flowの異常な多さで,back flowの流入する血管が異常に緊満することから,将来の瘤化を避けるため上臀動脈瘤以外の瘤は切除し大腿動脈も分断に努めた.術後経過に問題はなく,術後CTでは分断した大腿動脈の多くが血栓閉塞していた.本邦ではAMの報告はほとんどなく,きわめて稀な症例を経験したので報告する.
  • 高野 智弘, 高橋 皇基, 丹治 雅博
    2011 年 40 巻 6 号 p. 294-297
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性,平成12年から悪性関節リウマチ症候群にて加療開始,当時から心嚢液貯留を指摘され,これまでに心嚢液ドレナージを計4回施行された.平成21年,全身倦怠感,労作時息切れおよび下肢の浮腫を主訴に入院した.心臓カテーテル検査にて右室拡張末期圧の上昇とdip & plateau波形を認めたため,収縮性心膜炎と診断された.繰り返す心嚢液貯留および心不全増悪に対し手術を施行した.右室前面を中心に明らかな心外膜の肥厚とそれに伴う心室の拡張不全を認めたため,超音波メスと電気メスにて心外膜をワッフル上に切開したところdip & plateauの消失と心拍出量係数(術前:1.9 l/min/m2→2.6 l/min/m2)の改善を認めた.術後経過良好にて第25病日に退院した.本症例により収縮性心膜炎に対するWaffle procedureは有効な術式であると考えられた.
  • 新垣 涼子, 山城 聡, 神谷 知里, 前田 達也, 喜瀬 勇也, 盛島 裕次, 新垣 勝也, 國吉 幸男
    2011 年 40 巻 6 号 p. 298-301
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    近年,心大血管手術症例の増加に伴い,再手術症例も増加傾向にある.しかし,再胸骨正中切開を要する上行弓部大動脈再手術例においては高い死亡率が報告されており,その治療戦略においてさまざまな工夫が必要である.最近経験した上行大動脈仮性瘤2症例を報告する.症例1:74歳男性.2001年にDeBakey I型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術を施行した.2004年上行大動脈仮性瘤(中枢側吻合部近傍)に対しパッチ閉鎖術を施行した.2009年5月のCTにて前回パッチ閉鎖施行部付近に再度仮性瘤を認めた.コイル塞栓術を施行したが,仮性瘤内への血流が再開,瘤拡大を認め,緊急手術を施行した.感染兆候はなく,新たにパッチ閉鎖を行った.症例2:62歳男性.2003年にCABG 3枝を施行した.術後縦隔炎を発症し上行大動脈仮性瘤を形成した.上行大動脈パッチ閉鎖術を行った.以降当科外来フォロー中であったが,2009年7月,フォローCTにてパッチ閉鎖部に仮性瘤を認め当科入院となった.数回の開胸の既往があり高度な癒着が予測され,開窓型ステントグラフトを用いたステントグラフト内挿術を選択し,良好な結果を得た.
  • 毛利 教生, 島本 健, 坂口 元一, 小宮 達彦
    2011 年 40 巻 6 号 p. 302-305
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.突然の胸背部痛,呼吸苦を自覚し,救急搬送された.造影CTで上行大動脈基部から左右外腸骨動脈に及ぶ血栓非閉塞型の急性大動脈解離を認め,上行大動脈前面に明らかなentryを認めた.27度低体温循環停止・順行性脳循環のもと,解離のentryを上行大動脈前面に確認し,上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は順調であったが,術後7日目心肺停止状態で発見され,心肺蘇生を施行,再開胸を行ったが,タンポナーデの所見はなく,心臓は虚脱していた.造影CTで,左胸腔に多量の胸水を認め,偽腔は開存していた.病理解剖では,左胸腔に血性胸水を1,500 ml認め,遠位弓部の偽腔が破裂していた.腕頭動脈の起始部にentryを認めた.今回われわれは,Stanford A型急性大動脈解離に対して,上行大動脈に存在したentryを切除し上行大動脈人工血管置換術を施行したが,術後早期に下行大動脈破裂を合併した症例を経験した.Stanford A型急性大動脈解離に対する術式選択と術後の下行大動脈の合併症について本症例を検討し文献的考察を加えて報告する.
  • 澤田 健太郎, 田中 厚寿, 鬼塚 誠二, 三笠 圭太, 大野 智和, 飛永 覚, 岡崎 悌之, 廣松 伸一, 明石 英俊, 青柳 成明
    2011 年 40 巻 6 号 p. 306-309
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性で,遠位弓部大動脈嚢状瘤に対してMedtronic TALENT deviceを用い胸部ステントグラフト内挿術を施行した.中枢側標的ランディングゾーンは左総頸動脈分岐部直下(Z2)とし,目的位置にステントグラフトを留置できたが,直後から右橈骨動脈圧の低下を認め,経食道エコーで上行大動脈の解離が確認された.ただちに開胸手術へ移行すると,TALENT中枢側のグラフト材でカバーされていないベアスプリング(ベアステント)による弓部小弯側の内膜損傷が確認された.ベアステントの縫着部を切除し,留置したステントグラフトを併用した全弓部置換術を行った.時にTALENTステントグラフトは展開初期に特有の動きを呈する(開放異常)ことがあり,大動脈弓部に留置する際は注意を有すると考えられた.
  • 山崎 一也, 柳 浩正, 郷田 素彦, 鈴木 伸一, 益田 宗孝
    2011 年 40 巻 6 号 p. 310-313
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    転移性心臓腫瘍は稀な病態ではないが,食道癌が血行転移性に心内膜に転移することは稀である.われわれは食道癌が原発巣治療3年後に心外膜に直接浸潤することなく孤立性に右房右室内に転移し開心術で摘出した症例を経験したので報告する.症例は67歳女性.64歳時食道癌(低分化型扁平上皮癌stage IVa)に対して放射線+化学療法が施行された.67歳時胸部CT検査で右房右室内に3カ月前のCT検査ではなかった陰影欠損が見られた.心エコーでは右房内に可動性の不整形腫瘤を認めた.右房内腫瘍または血栓と診断され,心エコー検査の翌日に緊急手術を施行した.右房切開した所淡紅色で不整形の脆い腫瘤があり迅速病理検査で扁平上皮癌と診断された.可及的に右房右室内の腫瘍を切除した.術後29日で退院したが,2カ月後に心筋内転移が再発した.化学療法を施行したが多発リンパ節転移,心内再々転移により術後6カ月で死亡した.手術は根治的ではなかったが,腫瘍肺塞栓の予防と生存期間の延長に効果があったと考えられた.
  • 泊 史朗, 澤崎 優, 小林 頼子, 井澤 直人, 石橋 宏之
    2011 年 40 巻 6 号 p. 314-317
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    馬蹄腎は腎下極が癒合した腎奇形で,腹部大動脈瘤と合併することは稀である.動脈瘤手術に際して腎狭部および異所性腎動脈の処置が問題となる.症例は76歳,男性.他院にて径6.4 cmの腹部大動脈瘤および馬蹄腎の診断となり,手術適応として当科紹介となった.術前3D-CTでは,一対の正常腎動脈と馬蹄腎狭部に向かう異所性腎動脈径2 mm 1本,1 mm 2本を認めた.手術は腹部正中切開による経腹膜アプローチにて行った.馬蹄腎狭部を温存する形で腹部大動脈から両側総腸骨動脈をY型人工血管にて置換した.大動脈遮断後に腎実質の色調変化は認めなかったため,異所性腎動脈は再建しなかった.術後経過は良好で,第11病日に退院となった.腎機能は一過性に軽度低下したが,徐々に改善した.術後造影CTにて腎狭部梗塞を認めたものの,血清クレアチニン値はほぼ術前値にまで改善した.
  • 渡辺 裕之, 武内 重康, 沖本 光典, 藤田 久徳
    2011 年 40 巻 6 号 p. 318-321
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の男性.頭部外傷による広範囲脳障害にて気管切開による長期呼吸管理中であった.在宅介護中に発症した気道出血のため,ドクター・ヘリで当センターに搬送となった.来院後,再出血によるショックとなり,腕頭動脈-気管瘻の診断にて緊急手術を施行した.手術は胸骨部分切開にて,気管の瘻孔を直接閉鎖後,同部を胸鎖乳突筋にて被覆した.十分な洗浄の後,人工血管(8 mm Dacron graft)を用い,右胸腔内を迂回する経路で上行大動脈-右腕頭動脈バイパスを施行した.術後,新たな脳合併症の発症はなく,患者は第30病日に当センターを退院となった.術後3年が経過するが,気管出血の再発,人工血管感染は認めていない.十分な感染対策を行えば,人工血管による腕頭動脈再建は許容しうる方法と思われた.
  • 加藤 雄治, 加藤 全功, 古谷 光久, 久本 和弘, 杉村 幸春, 外山 雅章
    2011 年 40 巻 6 号 p. 322-325
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    今回われわれは巨大な右房原発血管肉腫により,症状出現から数日後という比較的急な経過で右心不全・ショック状態に陥った75歳女性の症例を経験した.緊急で人工心肺下に腫瘍を摘出し,EPTFEパッチによる右房再建を行い救命することができた.切除断端は陽性であり,術後放射線療法を追加した.現在術後14カ月を経過し,局所再発はないが,多発肺・肝転移に対して化学療法施行中である.原発性心臓血管肉腫は非常に稀で予後不良な疾患である.外科的な完全切除が治療の基本となるが,放射線療法や化学療法などを併用した集学的治療により,予後の改善を示す症例もあり,今回の経験を,文献的考察を踏まえて報告する.
  • 黒木 秀仁, 田渕 典之, 吉崎 智也
    2011 年 40 巻 6 号 p. 326-329
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    外傷性僧帽弁乳頭筋断裂の1例を経験した.症例は59歳,男性.交通事故による多発外傷で当院に救急搬送された.受傷4時間後に突然呼吸状態が悪化したため,人工呼吸器管理を開始した.呼吸不全の原因検索のために積極的な心機能評価を要したが,前胸部の皮下気腫のために心雑音は聴取できず,経胸壁心エコー検査でも弁膜の描出が不可能で診断に難渋した.受傷から3日目に行ったSwan-Ganzカテーテル検査で著明な肺高血圧を認めた.続く経食道心エコー検査では,断裂した前乳頭筋が後尖中央付近のcleft chordaeを支えにして左室と左房の間を浮遊していた.鈍的胸部外傷による急性僧帽弁逆流と診断し,受傷から5日目に準緊急的に僧帽弁置換術を行った.周術期脳梗塞を発症し,術後40日目にリハビリ病院へ転院した.高エネルギー外傷では,僧帽弁乳頭筋断裂などの心損傷が起こりうることを常に念頭におくことが早期診断に重要である.
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