日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
内科的治療が奏功した弁輪周囲膿瘍を伴った大動脈弁位人工弁感染性心内膜炎の1例
植木 力島本 健坂口 元一小宮 達彦
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2012 年 41 巻 1 号 p. 21-24

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抄録

68歳,男性.64歳時に大動脈弁置換術および上行大動脈人工血管置換術を施行され,その後弁機能をはじめ問題なく経過していた.悪寒を伴う39℃台の発熱を主訴に当科外来を受診した.血液培養からレンサ球菌が検出され,心エコーおよび心臓CTで大動脈弁輪周囲の膿瘍を認めた.弁機能不全の所見は認めなかったため,抗菌薬投与による内科的治療を行う方針とし,アンピシリン,ゲンタマイシンの投与を開始した.抗菌薬投与により速やかに炎症反応や白血球が正常化した.治療開始6週間後では膿瘍腔は画像上消失し,アモキシシリンの内服に切り替えた上で外来での経過観察に移行した.発症後5カ月の段階で感染徴候はなく抗菌薬投与を終了したが,発症後20カ月後まで膿瘍腔の再発を認めずに経過している.膿瘍形成をきたした感染性心内膜炎への内科的加療が奏功した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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