抄録
症例は74歳男性.増悪する左下肢の知覚異常を主訴に当院を受診した.身体所見上は左側腹部に拍動性腫瘤が認められたが,本人はそれを5年前から自覚していた.精査中のCT検査で8 cmの下腸間膜動脈瘤が認められ,その下腸間膜動脈瘤は他分枝動脈との交通形成などは認めず孤発性動脈瘤と判明した.治療は外科的切除を選択し,動脈瘤切除のみで血行再建は必要としなかった.術後経過は良好で術後3日目に食事を再開し,合併症なく20日目に退院となった.また病理組織検査では動脈瘤の原因は動脈硬化性と判明した.なお受診時の主訴である左下肢の知覚障害は術後も改善なく,腰椎疾患によるもので動脈瘤との因果関係は認められなかった.今後は切除断端の仮性動脈瘤形成や他動脈疾患の発症などのフォローが必要と考えられる.