抄録
Stanford A型急性大動脈解離に伴う脳血流障害・意識障害がみられる症例は緊急手術の適応外とする意見も多い.今回われわれは右総頸動脈が解離の進展により完全閉塞して高度意識障害を呈したStanford A型急性大動脈解離症例に対し,発症早期の緊急手術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は65歳男性,意識障害と左半身麻痺が持続した状態で搬送された.CTで上行~遠位弓部までの解離を認め,腕頭動脈から右総頸動脈は解離により閉塞していた.脳障害は必ずしも不可逆的ではないと判断して緊急手術を行った.速やかに脳血流の再開を得るため,まず左大腿動脈と解離・閉塞した右総頸動脈の真腔に送血管を留置し,それぞれに人工心肺側をクランプした分枝型人工心肺送血回路を接続したシャントにより脳血流を再開させた.この後に胸骨正中切開し上記2カ所からの送血でhemi-arch人工血管置換術を行った.術後6時間で覚醒,術翌日に抜管した.CTでは右中大脳動脈領域の脳梗塞がみられたが,退院時には麻痺もほぼ完全に回復し,術後46日目に独歩退院,6カ月で復職し完全に社会復帰している.高度意識障害を呈する全例に手術適応があるわけではないが,発症早期であれば確実で可及的速やかな脳血流再開の工夫をしながら緊急手術を行うことで,不良とされていた高度意識障害合併例の成績の向上につながると考える.