日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
胸部大動脈瘤に合併した DIC に対し,トロンボモデュリンアルファ製剤が著効した1例
中村 賢川人 宏次長沼 宏邦田中 圭松村 洋高川田 典靖配島 功成橋本 和弘
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2012 年 41 巻 3 号 p. 148-151

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抄録
胸部大動脈瘤に合併する慢性DICは線溶優位型を特徴とし,通常出血症状に乏しい代償性/非顕在性DICの状況で安定するといわれている.しかしながら,外的要因による出血を契機として,非代償性/顕在性DICとなり重篤な出血傾向を呈する症例がある.症例は66歳女性,7年前に急性大動脈解離(Stanford A, Debakey IIIb逆行性解離)に対し上行弓部置換術を施行した.その2年後から軽度の打撲をしただけでも容易に皮下出血を繰り返していた.2年前に右乳癌に対して乳房切除術,および右腋下リンパ節郭清の術中術後に血圧低下を伴う多量出血があり大量輸血を施行,これを契機に顕在性/非代償性DICとなった.今回,後腹膜出血,胸腔内出血を契機にDICとなったが,遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤であるリコモジュリン® が著効を呈し,出血傾向から離脱した.従来の保存治療が無効である症例に対しては,リコモジュリン® が著効を呈することがある.
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