抄録
本論文は、戦時下、国家的見地から、軍需工場用地造成のために実施された新興工業都市計画について、旧多賀町を事例として検討するものである。多賀町では、日立製作所の多賀工場建設にともなう住宅地造成のために、都市計画が策定され、その事業化にあたって新興工業都市計画事業としての多賀土地区画整理事業が実施された。新興工業都市計画事業の典型的な特徴は、大規模な工場用地造成のため、強制的に土地区画整理事業が実施されたことにあるが、多賀町では、それに先行して工場用地の買収がおこなわれていた点で大きく異なっていた。