抄録
右房内腫瘤・下大静脈血栓に対し,右房内腫瘤摘出術を施行し血管ベーチェット病と診断した稀な1例を経験した.症例は16歳男性.主訴は腹痛,発熱であった.虫垂炎が疑われ同日虫垂切除術を施行されたが,虫垂は正常で,その後も炎症反応高値が続いた.追加精査で可動性の右房内腫瘤・下大静脈血栓を指摘され,緊急で右房内腫瘤を摘除した.迅速病理診断で腫瘤は血栓と診断された.病歴と検査所見から血管ベーチェット病と診断し,術後経過良好で術後17日目に退院となった.時を逸せず適切な時期に腫瘤除去を行うことが肝要であり,特異な症状・経過を呈する右房内腫瘤の鑑別疾患には,ベーチェット病も重要であると考えられた.