抄録
症例は37歳男性で,脳炎治療のため他院へ入院中であった.早朝に突然の前胸部痛,呼吸困難を認めたため精査され,造影CTでは両側肺動脈内,右房内,左房内に陰影欠損が認められ急性肺動脈塞栓症であった.心臓超音波検査では右房内と左房内に血栓が浮遊しており,肺高血圧(推定50 mmHg)を呈していた.左房内血栓の飛散により動脈系の塞栓症を発症する恐れがあり,当院にて緊急手術を行った.心停止下に右房を切開したところ卵円孔に管状の血栓が嵌頓していた.嵌頓していた血栓は完全に除去することができ,奇異性脳梗塞などの動脈系塞栓症を発症することなく救命することができた.稀な病態であり文献的考察を含めて報告する.