抄録
膀胱癌に対するBacillus Calmette-Guérin(BCG)膀胱内注入療法は効果的治療として広く認められ,その感染性合併症は稀である.BCGに起因する感染性動脈瘤症例を経験したので報告する.患者は膀胱癌治療歴を有する64歳男性で,発熱,腹痛を主訴に緊急入院,CTにて右総腸骨仮性動脈瘤を認め緊急手術施行した.一般細菌培養は陰性であった.術後3カ月のCTで,新たな仮性瘤が腎動脈分枝レベルの腹部大動脈に認められ,徐々に拡大,中枢側への進展が認められた.初回手術より9カ月後の初回手術部残存骨盤後腹膜腫瘤の生検にて,抗酸菌感染による肉芽腫の診断,抗酸菌は遺伝子解析によりBCGと同定された.抗結核剤3剤の投与を開始したが,初回手術より14カ月後のCTで感染性大動脈瘤の急速な拡大を認め,リファンピシン浸漬人工血管にて胸腹部大動脈置換術を施行した.抗結核剤は10カ月投与で中止した.現在2回目手術より9カ月経過するが,再発の徴候は認めていない.BCG感染性動脈瘤治療は,一般細菌などによる感染性動脈瘤と異なる臨床像を呈するため,十分な病歴調査と手術時の組織診断,抗酸菌培養による確定診断,術後の抗結核剤投与が重要である.