日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
弁間線維体の高度石灰化を伴う大動脈弁狭窄症,僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症に対して2弁置換術を施行した1例
船本 成輝南方 謙二山崎 和裕三和 千里丸井 晃村中 弘之高井 文恵熊谷 基之仲原 隆弘坂田 隆造
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2012 年 41 巻 6 号 p. 308-311

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抄録
高度僧帽弁輪石灰化をともなう症例の僧帽弁手術は,弁輪部の処理にともない房室間溝からの出血や左室破裂などの致死的合併症を発生する可能性があり,手術の難易度は飛躍的に高くなる.今回,われわれは弁間線維体の広範囲石灰化をともなう大動脈弁狭窄症(AS)および僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症(MSR)に対して,大動脈弁および僧帽弁置換術を行った症例を経験したので報告する.症例は76歳女性で,2年前より労作時呼吸困難と下腿浮腫が出現し,半年前から意識消失発作を認めるようになった.心エコーにて高度のASとMSRおよび弁間線維体で連続する弁輪高度石灰化を認め,手術目的で当院紹介となった.僧帽弁は前尖弁輪全体から後尖弁輪にかけて高度の石灰化を認めた.後尖弁輪の石灰化は超音波外科吸引装置(CUSA)にて左房内より除石灰を行い,前尖弁輪の石灰化は大動脈弁越しにロンジュールとCUSAにて除石灰を行った.除石灰は徹底的には行わず,針の刺入が可能な状態までの石灰化破砕に留めることで,弁輪再建をせずに通常どおりの弁置換で対応可能であった.術後弁周囲逆流はなく,近医へリハビリ転院となった.
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