日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
上腸間膜静脈脈瘤に対する外科治療経験
林 潤内田 徹郎吉村 幸浩金 哲樹前川 慶之宮崎 良太大塲 栄一貞弘 光章
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2013 年 42 巻 1 号 p. 34-37

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抄録

きわめて稀な疾患である上腸間膜静脈脈瘤(superior mesenteric venous aneurysm,以下SMVA)に対する外科治療経験を報告する.症例は64歳,男性.胃癌術後の経過観察中,CTでSMVAを指摘され,増大傾向を認めるため外科的治療の方針とした.瘤は上腸間膜静脈本幹と脾静脈との合流部から約10 mm末梢側に位置する28 mm大の嚢状瘤で,瘤の頭側1/3は膵臓に覆われていた.手術は仰臥位,上腹部正中切開から右側方に切開を延長する逆L字切開でアプローチした.Kocherの授動術から膵頭部を露出,瘤を切除し,ウシ心嚢膜でパッチ形成した.術後,膵酵素・肝逸脱酵素の上昇は認めず,第9病日に退院した.SMVAは,文献上十数例の報告があるにすぎず,治療方針に関する明確な基準はない.経過観察で問題なしとする報告が多い一方で,破裂による死亡例も報告されている.嚢状の形状で増大傾向を認めた場合には,破裂の危険性が高いと判断し,外科治療を考慮する必要があると考えられた.

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