抄録
症例は高血圧を既往にもつ59歳男性.仕事中に突然の胸背部痛を自覚し,眼球上転し転倒した.発症より約20分後に当院に救急搬送となる.来院時,右共同偏視,左片麻痺を認めた.造影CT検査にて,上行大動脈から左右腸骨動脈にかけて解離を認め,右総頸動脈は真腔が偽腔により圧排されていた.脳灌流障害を伴った急性A型大動脈解離と診断し,発症より2時間半後に緊急手術を行った.Entryは上行大動脈に存在し,選択的脳灌流下に部分弓部置換術を行った.術後,神経症状は増悪を認めず経過とともに改善し,術後22病日に独歩退院となった.脳灌流障害を伴ったStanford A型急性大動脈解離を経験した.発症早期に大動脈修復術を行うことにより,神経症状を増悪することなく良好な結果を得ることができた.若干の文献的考察を加えて報告する.