日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告
大動脈弁輪拡張をきたした8歳,男児の Loeys-Dietz 症候群に対して自己弁温存大動脈基部置換術を施行した1例
古野 哲慎赤須 晃冶税所 宏幸平田雄 一郎高木 数実小須賀 智一友枝 博有永 康一明石 英俊田中 啓之
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 42 巻 3 号 p. 236-240

詳細
抄録

症例は8歳男児で,生後2カ月目にVSDに対してパッチ閉鎖術を施行された.1年後の心臓カテーテル検査にて大動脈弁輪拡大を指摘された.また2歳時に身体所見と併せて,TGFBR2の変異からLoeys-Dietz症候群と診断された.その後も当院小児科にて定期的に経過観察されていたが,今回バルサルバ洞径46.5 mmと拡大を認め,中等度の大動脈弁閉鎖不全も認めたため,手術目的に当科紹介となった.大動脈弁は3尖で器質的変性は認めず,自己弁温存が可能と判断し,自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.術後経過に問題を認めず,術後18日目に自宅退院となった.小児期の大動脈基部病変に対する手術で人工弁を用いた場合,将来的な再手術の可能性やワーファリンコントロールの問題もあり,その術式選択は慎重になされなくてはならない.弁の変形のない症例では自己弁温存大動脈基部置換術は有用な術式であると考える.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top