日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
妊娠23週4日に緊急再僧帽弁置換術を施行し,母児ともに救命し得た1例
元松 祐馬園田 拓道大石 恭久田ノ上 禎久西田 誉浩中島 淳博塩川 祐一富永 隆治
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2013 年 42 巻 5 号 p. 425-429

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抄録

症例は23歳女性.18歳時に感染性心内膜炎に対して生体弁による僧帽弁置換術(Carpentier-Edwards Perimount® 27 mm)を施行され良好に経過していた.術後5年目に妊娠したが,妊娠21週目より呼吸困難感が出現し,しだいに症状が増悪したため精査を行ったところ重症僧帽弁狭窄症による心不全と診断された.妊娠23週2日に当院に緊急搬送された際にはNYHA IV度の重度の心不全の状態であり,内科的治療抵抗性であり手術適応となった.母体救命を最優先としつつ可能な限り妊娠の維持・継続を行う方針とし,妊娠23週4日に緊急的に再僧帽弁置換術を施行した.母体側管理として,母体体温を常温に維持し,人工心肺は拍動流・高流量・高灌流圧とし,高K血症を避ける,等の対策をとることで胎盤循環維持に努めた.術中は胎児心拍を常時モニタリングした.ICU入室後に突如,子宮収縮を認めそのまま経腟分娩で出産となったが,児は待機していた新生児科医にて挿管のうえNICUへ搬送し救命された.母体は術直後より循環動態の著明な改善を認め,術後24日目に独歩退院した.児は出生時体重520 gであり,治療経過中に水頭症を合併したものの全身状態は安定しており,脳室-腹腔シャント作製の後,日齢137に紹介元へ転院となった.生体弁劣化に伴う人工弁不全により重度の心不全を来し,妊娠中に再手術が必要となるケースは非常に稀である.胎児救命に対する周術期管理の特殊性がゆえに,治療方針決定については他科を含めた集学的対策が必要である.

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