2013 年 42 巻 6 号 p. 471-474
症例は78歳,女性.20歳代から高血圧症に対し内服加療中であった.3カ月前より呼吸苦や動悸を伴う心不全症状が出現し,精査にて心房中隔欠損症,三尖弁閉鎖不全症,心房細動を伴う大動脈縮窄症と診断され当科に紹介された.手術は胸腹部正中切開にて心房中隔欠損閉鎖術,三尖弁輪縫縮術,左房Maze手術,上行大動脈-腹部大動脈(腹腔動脈上)人工血管バイパス術を一期的に施行した.術後経過は良好で,心不全症状と上下肢の血圧差は消失し,高血圧は1剤の降圧薬内服にてコントロール可能となった.78歳の心疾患を伴う大動脈縮窄症に対し一期的手術を行った自験例は,文献的には国内外を問わず最高年齢であった.70歳以上で大動脈縮窄症と診断される症例は稀であり,診断の遅延や手術方法に関し,文献的考察を加えて報告した.