日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
腹部大動脈瘤人工血管置換術後の人工血管脚吻合部に生じた尿管動脈瘻に対する血管内治療の1例
関 功二
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2013 年 42 巻 6 号 p. 475-479

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抄録
63歳男性.2008年12月に腹部大動脈瘤に対し当科においてY型人工血管(16×8 mm Hemashield Gold®)置換術が施行されたが,2010年12月に右水腎症の診断で他院において右尿管ステントが留置された.水腎症は軽快し2011年7月に尿管ステントが抜去されたが,10月に腹部膨満感と肉眼的血尿が出現し,右水腎症再発の診断で尿管ステントが再留置された.しかし,その後も肉眼的血尿が持続するため精査加療目的に当院泌尿器科に紹介入院となった.造影CTでは明らかな瘻孔や尿管への造影剤漏出などの所見は認められなかったが,尿管ステント長期留置の既往があることや,尿路内に明らかな出血性病変が存在しないにもかかわらず肉眼的血尿が持続することから,人工血管右脚と右総腸骨動脈の吻合部での尿管動脈瘻形成が強く疑われた.感染の合併を疑わせる所見を認めなかったため,尿管動脈瘻に対して止血を目的に血管内治療を施行した.内腸骨動脈をコイル(TORNADO® 7 mm×3, 5 mm×2)塞栓し,人工血管右脚から右外腸骨動脈にかけてカバードステント(fluency plus® 10 mm×80 mm)を留置し,血尿は消失した.尿管動脈瘻に対する血管内治療によるカバードステント留置は長期成績が不明であるが,迅速かつ低侵襲で有効な方法であり,開腹手術に加えて治療方法のひとつとして検討されるべきと考える.
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