抄録
【背景・目的】血行動態に優れた人工弁の開発により,弁輪拡大術を回避できるようになってきたが,若年者に対する手術の際は,青年~壮年期にかけての身体成長を考慮する必要がある.そのため当院では狭小大動脈弁輪症例に対し,最終想定体表面積よりProsthesis-patient mismatchを生じないサイズの挿入を前提に,積極的に弁輪拡大術を施行している.当院の先天性大動脈弁狭窄症に対する弁輪拡大術の治療成績を検討する.【対象】2002年~2012年7月の期間で,先天性大動脈弁狭窄症に対して当院で弁輪拡大術を施行した11例を対象とした.年齢は9~38歳(中央値:15.5歳),性別は男性9例・女性2例,平均BSAは1.48±0.3 m2 であった.【結果】拡大術式は,Nicks法4例/Manouguian法3例(modified Manouguian法2例)/Yamaguchi法2例/Konno法2例.使用した人工弁は11例すべて機械弁であり,平均人工弁サイズは19.4±1.1 mm(ATS-AP:18 mm 2例,SJM Regent:19 mm 6例・21 mm 2例,SJM-HP:21 mm 1例).周術期および遠隔期死亡はない.全11例とも外来観察中で,平均観察期間は32.1カ月(1~117カ月)であった.経過中弁関連イベントは認めず,心臓超音波検査評価では,遠隔期における左室心筋重量の減少を認めた.【結語】先天性大動脈弁狭窄症に対する弁輪拡大術は,安全かつ有用な手技である.