抄録
症例は71歳男性,10年以上前に胸部X-Pで右側大動脈弓,Kommerell憩室,軽度漏斗胸と診断.無症状で他の合併症を認めず経過観察された.他疾患で救急受診の際,憩室の拡大を指摘され当科を紹介された.CTでは左鎖骨下動脈起始異常を伴わない鏡像的な右側大動脈弓であり,弓部大動脈の角度が急峻であった.手術は全麻下に左右腋窩-右総頸動脈を8 mm径のリング付きT字型e-PTFE製人工血管でバイパス作製した.右大腿動脈アプローチで企業製造ステントグラフト(Conformable GORE® TAG® 37 mm径-200 mm長)で左腕頭動脈起始部よりステントグラフト内挿術を施行した.留置後のDSAではendoleakを認めず術後経過は順調であった.きわめて稀な左鎖骨下動脈起始部異常を伴わない右側大動脈弓,Kommerell憩室に対するステントグラフト内挿術を経験したので報告した.