日本心臓血管外科学会雑誌
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症例
Amplatzer Vascular Plug が有用であった破裂性腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術の1例
秋好 沢林井上 政則田村 智紀福西 琢真尾原 秀明
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2014 年 43 巻 6 号 p. 351-356

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抄録
腸骨動脈瘤を伴う破裂性腹部大動脈瘤をAmplatzer Vascular Plug(AVP)IIを併用してステントグラフト内挿術(EVAR)で治療し得たので報告する.症例は73歳男性.他院でCTにて破裂性腹部大動脈瘤と診断されて当院へ搬送された.前医CTで70 mm大の破裂性腹部大動脈瘤(Fitzgerald III型)と30 mm大の右総腸骨動脈瘤を認めた.ただちに救急外来より手術室に搬送し,AVPでの右内腸骨動脈塞栓を伴うEVARで治療した.総手術時間は138分であった.患者は順調に回復し,術後2日目にICUを退室した後,発症より9日目に退院した.破裂性腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)の有用性は本邦においても認識されつつある.しかし,腸骨動脈瘤を合併し内腸骨動脈塞栓術を要する症例ではコイル塞栓中に全身状態の増悪を招く恐れがあるゆえにEVARは第一選択とはなりにくい.AVPはnitinol製シリンダー型自己拡張塞栓物質である.現在AVPIとAVPIIが使用可能であるが,従来のコイルと比較すると,特にAVPIIは塞栓力が高いうえに短時間で留置可能であり,緊急時には有用である.今回,われわれは腸骨動脈瘤を合併した破裂性腹部大動脈瘤に対してAVPIIで内腸骨動脈塞栓術をし,迅速にEVARを施行し得た症例を経験した.AVPは日本における市販後調査中で限定施設でのみ使用できる段階ではあるが,AVPの併用は破裂性腹部大動脈瘤に対するEVARの適応拡大と成績向上につながると期待される.今回の経験を文献的考察も踏まえて報告する.
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