日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
左内胸動脈を用いた冠動脈バイパス術後に左胸壁壊死をきたした1例
村山 公磯部 文隆綿貫 博隆二村 泰弘
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2015 年 44 巻 3 号 p. 121-124

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抄録

症例は53歳の男性.34歳で血液透析導入,48歳時に閉塞性動脈硬化症(ASO)による右足背潰瘍壊死,49歳時に原因不明の側腹部皮膚の難治性潰瘍を発症した既往がある.52歳時に冠動脈造影検査にて三枝病変を指摘されるも,本人の希望にてPercutaneous Coronary Intervention(PCI)を繰り返したが改善を認めず,手術加療目的に当科紹介となった.術前CT検査にて全身の血管の著しい石灰化を認めた.手術は左内胸動脈(LITA)と大伏在静脈(SVG)をグラフトとして使用し,心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を施行した.術翌日より徐々に左胸壁の壊死性変化を認め,第32病日に胸骨が離開し,第43病日に壊死皮膚組織掻爬と胸骨再縫合を施行した.病理組織学検査では動脈の中膜の石灰化,内膜肥厚,内腔狭小を認め血行障害による壊死が考えられた.その後Vacuum Assisted Closure(VAC)療法にて創の縮小は認めたが,胸骨の腐骨化が著しく,第82病日に腐骨除去と左胸壁植皮術を施行し,第148病日に独歩退院となった.今回の経過で明らかな感染は認めなかった.左内胸動脈を用いた冠動脈バイパス術後に左胸壁壊死をきたした1例を経験し,その原因としてCalciphylaxisの可能性が示唆された.長期透析患者の冠動脈バイパス術での内胸動脈採取に際し,本病態を考慮して実施すべきである.

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