2015 年 44 巻 4 号 p. 212-216
高齢化社会を背景に,動脈硬化性疾患であるShaggy Aorta Syndromeは本邦でも症例報告が散見されるようになってきたが,依然として診断,治療に一定の見解はない.今回当科にて経験した2症例について報告する.症例1は,75歳男性で腎動脈下腹部大動脈に限局したShaggy Aortaから,左膝窩動脈へのAcute Limb Ischemia(ALI)をきたした症例である.症例2は,維持透析中の76歳男性で,腎動脈下腹部大動脈のモバイルプラークを起源とするblue toe syndromeをきたした症例である.この2症例に対し,塞栓源の根治を目的に腹部大動脈人工血管置換術を施行し,術後1年以上再発なく経過している.腎動脈下腹部大動脈に限局したShaggy Aortaに対して再発防止のため人工血管置換術が有効であると考えられた.また,大動脈エコー検査が術前の診断ならびに術中の遮断部位の決定に有用であった.