抄録
右胃大網動脈(RGEA)を用いたCABG手術歴のある感染性腹部大動脈瘤に対し,解剖学的人工血管置換および大網充填術を行うことができ,良好な結果が得られた1例を報告する.症例は60歳,男性.慢性腎不全で維持透析中に発熱,腹痛,全身倦怠感を生じ当院に入院した.造影CTで感染性腹部大動脈瘤と診断し,感染の鎮静化を図る目的で抗生剤の静脈投与を開始した.手術は,術前に大網が残存しているか不明であったため,非解剖学的血行再建である左腋窩-両側大腿動脈バイパス術を先行した.開腹後,in situ人工血管を被覆するための大網が確認され,脆弱な大動脈壁を切除できたため,リファンピシン浸漬人工血管による腹部大動脈置換術と大網充填術を施行した.術中検体からはEnterobacter aerogenesが検出された.術後は,抗生剤を25日間静脈内投与した.内服投与に移行した後はCRPが正常化するまで継続し,以後1年間,感染の再発は認められなかった.