2017 年 46 巻 4 号 p. 173-176
鎖骨下動脈起始異常を伴うKommerell憩室(以下KD)の4例を経験した.症例1,2は右側大動脈弓にKD,左鎖骨下動脈起始異常を合併していた.症例3は左側大動脈弓にKD,右鎖骨下動脈起始異常を合併していた.以上の3例は大動脈弓と同側第IV肋間開胸,循環停止下に下行大動脈置換術を施行した.症例1,2はin situで鎖骨下動脈を再建した.症例3は左鎖骨下動脈を再建しなかったが,左上肢の虚血症状はなかった.症例4は左側大動脈弓にKDおよび右鎖骨下動脈起始異常,急性大動脈解離を合併しており,正中切開,低体温循環停止,選択的脳灌流で上行・弓部置換術,frozen elephant trunk法を行った.上行および弓部大動脈の操作を伴わないKDでは側方開胸でのアプローチ,上行・弓部大動脈操作を伴う症例では胸骨正中切開でのアプローチが推奨される.