日本心臓血管外科学会雑誌
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[末梢血管]
腸骨動脈破裂術後,一時的腹壁形成術を要した血管型エーラスダンロス症候群の1例
松崎 賢司瀧上 剛松浦 弘司
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2018 年 47 巻 3 号 p. 153-156

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抄録

症例は39歳男性.左腸骨動脈解離,破裂にて緊急で開腹人工血管置換を施行した.術後閉腹不能であり,術後8日目に一時的腹壁形成術(TAC)をComposix Mesh® と持続陰圧閉鎖(NPWT)を用いて施行した.初回術後19日目に術前にはなかった総肝動脈瘤破裂をきたし,緊急再開腹手術を施行した.その後再度Composix Meshをあてなおし再TACを施行した.腸管浮腫軽減と後腹膜血腫吸収が得られたため初回術後43日目に閉腹手術を施行した.Composix Meshは完全に除去した.Components Separation法と腹直筋前葉翻転法による自己組織のみでの閉腹が可能であった.初回術後106日目に独歩退院となった.遺伝子検査にてCOL3A1の変異が確認され血管型エーラスダンロス症候群(EDS)と診断された.腹部動脈破裂術後の長期閉腹不能例にComposix MeshとNPWTによるTACが有効であった.若年者の血管破綻は血管型EDSの可能性があり治療に難渋することが予想される.

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