日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
僧帽弁穿孔,腱索断裂を引き起こしたと考えられた calcified amorphous tumor の1例
衣笠 由祐手嶋 英樹井上 善紀田井 龍太佐藤 充池淵 正彦入江 博之
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2019 年 48 巻 4 号 p. 259-262

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抄録

Calcified amorphous tumor(CAT)は,1997年に初めて報告された石灰化結節を伴う非腫瘍性病変であり,透析患者や僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification ; MAC)に関連する症例が多いとされる.CATは全身塞栓症のリスクとされるが,CATが自己弁組織を破壊し弁膜症を来たした報告は稀である.症例は81歳女性.高血圧で近医に通院していたが,1年前より労作時の息切れを自覚するようになり,診察で心雑音を指摘され当科紹介となった.心エコー図検査で,後尖腱索断裂を伴う重症の僧帽弁閉鎖不全症を認め,また,MACと連続するように左室内へ突出する可動性の乏しい棍棒状構造物を認めた.手術適応と判断し,待機的に僧帽弁形成術を施行した.P2の弁下にMACから起始する棍棒状石灰化腫瘤を認め,また,腫瘤直上のP2腱索断裂,対側A2に弁穿孔がみられ,腫瘤により物理的に破壊された可能性が高いと考えられた.腫瘤切除,後尖P2三角切除,穿孔部閉鎖などにより僧帽弁形成可能であった.病理組織検査で,腫瘤は感染や悪性所見は認めず,CATに矛盾しない所見であった.CATは塞栓症だけでなく,自己弁組織を破壊しながら発達する場合があり,慎重な経過観察と手術時期を逸さないことが重要である.

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