2019 年 48 巻 6 号 p. 433-437
症例は66歳男性.腹部大動脈瘤手術および冠動脈バイパス術から13年後,経過観察目的で施行したCT検査で径35 mmの右鎖骨下動脈瘤を認めた.右内頸動脈の閉塞も認め,術中の頭蓋内血流維持が重要であり術式に工夫を加えた.術中は無侵襲混合血酸素飽和度監視装置 (INVOS®) を前額部と後頭部に装着し脳血流モニタリングを行った.右腕頭動脈の遮断テストでINVOS® の有意な低下を認めたため,瘤切開,人工血管縫着の際は,右鎖骨下動脈中枢側および末梢側をそれぞれ遮断し,右総頸動脈は遮断することなく血流を保った.また,右大腿動脈→右上腕動脈外シャントを施行し,右椎骨動脈への血流も保った.以上により脳梗塞をきたすことなく患者は退院した.